ビルでディストレスト(借入金の返済不能になる等)な状態になった物件の売却が増加している。5200万$(72.8億円)で取得された物件が1430万$(20.0億円)で売却され、コストが1.2億$(168億円)強だった新築ビルが6000万$(84億円)で売却されている。
一方、ビルの値段が下がった事を見て買い手も戻っている。ニューヨークの空室を抱えるビルには個人の投資家が「ニューヨークでビルを持てる」として買いに入り、昨年下半期の売買11件のうちの7件がこれらによるものだ。著名なイギリス人富豪兄弟も買っている。
ブルックフィールズのCEOは先月のデフォルトについて「7000物件も持っていると手違いは避けられない。我々は金を借りた人間として誇りを持つ」とした。一方、同じくデフォルトをしたブラックストーンはデフォルトを武器にしてレンダー群との交渉入りしている。
オフィス復帰の遅れでオフィス株の大幅安が続いている。SLグリーン株は2015年が140$で今は22.54$、ボルナドは2020年が67$が今は13.13$だ。両社とも年初から30%下げた。オフィス株はかなり前から下落が始まり、新型肺炎問題はそれを加速させただけだ。
(アメリカのビル関係の記事は末尾)
アメリカの地銀の連続破たん危機は直近ではパックウエストに波及していた。同行はビバリーヒルズ本拠で不動産投資資金の融資に強い。地銀危機の今後はまだ即断できない。
WeWorkのマスラニCEOが突然退任した。同社を存続不可能と見切ったのだろう。
住宅売買市場に顕著な傾向が見られる。中古住宅は売主が現在持つローンの低金利さからこれを手放す気になれず「売り物件数」が20-30%以上と大きく減少している。結果、供給不足により価格は下げ渋っていたが、直近のデータでは価格も下がったとされている。
Eコマースは「新ビジネス」ではなくなった。新型肺炎前の10年間は売上げが年15%伸びていたが、今は年8%の伸びだ。Eコマース全体が伸びるというよりは「ウォールマートは伸びているがターゲットは売り上げ減」と、同じ業界でも会社により差が付いている。
ディズニー社は、大統領選に出馬するディサンティス・フロリダ州知事と対立しているが、意趣返しと見られる策を発表した。カリフォルニアのある部門のフロリダへの移転計画の取りやめと、前評判は高かったが高価格過ぎて客足が悪いアトラクション・ホテルの休止。
「伝説の」あるいは「古老」と言っていい不動産王、サム・ゼル氏(81才)が死亡した。
中国でまた新型肺炎が拡大している。「XBB」種として報じられている。
中国の70大中都市住宅指数の4月の上昇率は0.32%で3月の0.44%上昇から鈍化した。
中国の不動産・住宅市場は一時、回復に向かっていたが、各デベの資金繰りは依然として悪く、デフォルト額は去年の637億$(8.9兆円)に今年は101億$(1.4兆円)が加わる。政府にとりデベが債務の返済可能かよりも、消費者保護や社会の安定の方が優先される。
イギリスでは超豪邸売買市場が活発化し、この一年間でのこれらの売買件数は161件で2016年当時の164件とほぼ並んだ。ケンジントン、ベルグラビア、メイフェアで多い。
イギリスのランドセックとブリティッシュランドは金利上昇で保有資産に大きな引当損を建てた。各7.7%と12.2%分である。これにより不動産下落に底打ち感も出た。
大陸ヨーロッパの不動産市場に危険な状態が続いている中、ホテルには買いが集まっている。顕著なのは中東勢で、ウエスティン、エディションなどの大型物件も含まれている。
***ジャパン・トランスナショナル 坪田 清***
http://www.japan-transnational.com/
(アメリカのビル関係の記事は末尾)
ビル:ディストレストな売却が増加しビル市場が「新たなチャプター」へ
(ウォールストリート・ジャーナル電子版 2023.5.16・火)
ブラックストーンはオレンジ郡のビルを購入価格より36%安く売却、別の会社はニュージャージーで5200万$(72.8億円)で取得した物件を1430万$(20.0億円)で売却した。ハインズがワシントンDCで6000万$(84億円)で取得した新築ビルはコストの半分以下だ。第1四半期のビル売買高は前年比で68%も減少、ビルの売買価格が大幅に低いと周辺の家賃の低下が起こる。成約価格は売主の希望価格より平均31%低いが前年は7.1%低かった。CMBSを組成するビルの債務不履行は増加し、差し押さえ件数は去年の6件から今年は26件に増加した。
ビル:ニューヨーク所在の空室ビル群が個人富裕層を安値で引き付ける
(BBC 2023.5.9・火)
マンハッタンの商業不動産の中で最も苦境にあるのはオフィスビル群だが、富裕な個人投資家の一部に「ニューヨークで不動産を所有する」という事への魅力を感じる人間が出ている。彼らによる購入が全体に占める割合は増加中で、今後さらに増えそうで、「ウォウ、ニューヨークが今なら安い」と考えている。昨年下半期にあったビル取引11件のうち7件が個人富裕層やファミリーオフィスによる購入だ。機関投資家等は模様眺めしている。
ビル:ウォール街でがら空き状態が続くある超高層ビルと市財政への不安
(ブルームバーグ 2023.5.18・木)
47階建てビル、60ウォールストリートはドイツ銀行が2021年に退出して以降、全空だ。所有者はシンガポールのSWFとパラマウント・グループだが、金融会社はこのビルより新築のハドソンヤードの方を好む。ニューヨークは空室率が11%を超す事はないと昔は言われたが現在の空室率は22.7%で募集賃料も若干下落している。
ビル:オフィス復帰が遅れ、オフィス株が大幅安に
(ウォールストリート・ジャーナル電子版 2023.5.22・月)
SLグリーンの株価は2015年のピーク時には140$だったが現在は22.54$、ボルナドは2020年に67$だったが現在は13.13$だ。両社とも年初から30%強下げている。年初にあったオフィス復帰が回復するという動きは今は横ばいで、オフィスリート株には空売りが集っている。オフィス株の下落は新型肺炎前から始まっていてそれに加速がついた。もっとも直近ではオフィスを探す動きが12月より23%、増加している。
ビル:カナダのブルックフィールド・CEOが同社のデフォルト問題を語る
(ブルームバーグ 2023.5.12・金)
ブルックフィールドのCEOは先日の2ヶ所のデフォルトについて、「不動産を7000本も持っていたら全部を完璧にしておく事は不可能な物なのだ:」とし、ブルクフィールドはお金を借りた人間として非常に責任感を持つ会社である事を、常に誇りにしていると加えた。また不動産ローンは担保価値の点で何ら問題を起こしていない。
ビル:ブラックストーンがシカゴのオフィスのローンでレンダーと協議
(ブルームバーグ 2023.5.23・火)
ブラックストーンはシカゴのビルのCMBSローン3.1億$(434億円)を特別サービサー入りとし、レンダー群との協議に入った。返済期は7月だ。このビルは1970年代の築でアメニティにモダンさがなく立地にも難がある。ブラックストーンは昨年このビルをゼロ評価とした。ブルックフィールドやピムコもデフォルトをしている。