アメリカの住宅、売買市場は崩れ始め、賃貸市場はまだ好調

 アメリカの住宅の売買市場が冷え始めた。契約をしてもクローズに至らないケースが増加、入札合戦の発生率は年初は70%だったが7月は44%に減少、売却希望価格を値下げする例が出、特にハンプトンでは値下げが常態化した。地域によっては短期間で市況が落ち込む例もある。

 

 住宅の賃貸市場の方は売買価格の高騰で住宅を買えなくなった人が流れてきて、好調さが続いている。ニューヨークでは家賃の高騰から市の外周部で物件探しがされている。

 

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 マンハッタンのテナントでいくつか動きがあった。借り増しとしては地銀のキャピタル・ワン、ファンドの400キャピタル・マネジメントがあり、マンハッタン内の移転としては会計事務所のKPMGある。KPNGはハドソンヤード近傍に移るが借り床面積は縮小する。

 

 マイアミの活況が続いている。温暖で州の所得税がない上、新型肺炎でニューヨーク他からの移住者が増えた。最近ではシカゴから移転するシタデルが大きな刺激となっている。

 

 「生産性は変わらない」として在宅リモート勤務を主張し続ける従業員が依然としている。新型肺炎前は「課長が在宅で指示を出し、部下がオフィスで勤務をする形」が見られたが、今は「上司が家にいる部下にオフィスでの協業の有利さを納得させる」必要がある。

 

 アマン・ニューヨークが同市の最高級ホテルとしてオープンした。最も高い室料はスィート2室を繋げた場合の3.6$(493万円)、マンション部分の最高価格は1.8$(247億円)

 

 リレイティッドはハドソンヤードで運営しているホテル、エクイノスを売りに出す。

 

 超メガモール、アメリカンドリームがデットの利払いで支払い期日に支払えなかった。今回で2回目だが、両方とも支払期日以降に支払いをしてデフォルトとはされなかった。

 

 ターゲット、コールズ。メイシーズ等の小売大手が軒並み、売れ筋を外した大量の在庫で苦しんでいる。サプライチェーンが混乱していた当時、欠品で商品陳列棚に穴が空く事を恐れて前倒しで大量の発注をしていた。しかし新型肺炎後には売れ筋が激変してしまった。

 

 中国では70大中都市新築住宅価格指数が11か月連続で下落した。デベのドル建て債の価格は経営が健全と見られていた所だけでなく、政府系デベまで下落をしている。

 

 中国の当局は「特別融資」として2000億元(4.0兆円)の枠で、主要デベ5-6社が発行する新発社債に保証を与えて支援、これにより工事停止状態のプロジェクトを前に進めて購入客への引き渡しが可能なようにしようとしている。しかし「額が少なすぎる」との声がある。

 

 ロンドンでも物件の供給不足から家賃が急上昇している。市場に出ている賃貸物件の戸数は、昨年の半分しかない。

 

 ソフトバンクが前四半期の赤字の2.2兆円に続き、当四半期も3.16兆円と連続の超巨額の赤字を出した。一方、「金の卵」であるアリババ株をデリバティブで売却して220$(3.0兆円)の利益を出した。今後は保有非上場株の巨額評価損がさらに見込まれる。

 

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住宅売買・軟化:契約入りしながらもクローズに至らない売買が増加 

(ニューヨークタイム 2022.8.12・金)

 20203月の新型肺炎入りした直後、キャンセル率は18%に上昇したが、主因は登記事務処理の役場が閉鎖してしまった等だった。20226月のキャンセル率は15%に増加、今回の主因はビッドからクロージングまでの2か月間の間に金利が変わってしまう事だ。ラスベガスやフロリダでのキャンセル率が高く、27%。

住宅売買・値下げ:売却希望価格の切り下げ、新型肺炎でのブームの町で多発 

(ブルームバーグ 2022.8.23・火)

 アイダホ州ボイシでは7月、売り物件の70%が値下げしている状態となったが、前年は30%だった。夏の初めから価格の切り下げが急となり、リアリスティックではない価格にこだわっている売り手もまだいる。全国でも価格を下げた物件の割合は7月は21%と過去に例がない高さだ。デンバーでは58%、タンパで52%だ。

住宅売買・値下げ:入札合戦が起きる割合がしぼむ 

(ブルームバーグ 2022.8.12・金)

 住宅売却時に競争となる比率は7月は44%で6か月連続で減少、20204月以来の低さだ。年初は70%で、価格はまだ高止まりしている。半年前はどんな物件でも売れていたのに、市場はここ数ヶ月間で激変した

住宅売買・指標:7月の住宅着工が急減 

(ウォールストリートジャーナル電子版 2022.8.16・火)

 7月の新築住宅着工は季節調整済み年換算で145万戸と、前月比で9.6%の減少となった。着工許可件数は170万件で1.3%の減少。年内は住宅市場が冷えるとの見込みにも拘らず、住宅価格は依然として高止まりしている。

住宅売買・指標:7月の既存住宅販売、6か月連続で下落 

(ニューヨークタイムズ 2022.8.18・木)

 7月の既存住宅販売は前月比で5.9%と6か月連続の減少、季節調整済み年換算で481万戸となり、前年比では20.2%の減少をした。住宅市場はスローにはなっているが、「破裂」からはほど遠い状態だ。

住宅売買・指標:新築住宅販売が2016年以来の水準に急降下 

(ブルームバーグ 2022.8.23・火)

 7月の新築戸建住宅販売は年換算51.1万戸と前月比で12.6%減少し、今年6回目の減少となった。新築住宅のメディアン価格は前年比8.2%上昇して、43.94$(6020万円)。着工待ちのバッグログ件数は16.5万戸。

住宅売買・軟化:業界最大手の仲介会社・コンパスが不調からコスト削減へ 

(ブルームバーグ 2022.8.16・火)

 コンパスは10年前に不動産仲介業界へ新規参入をしたが、昨年は業界最大手となった。第2四半期赤字は1.01$(128億円)で、3.2$(438億円)のコスト削減を行なう。削減の主たる対象はIT運営部門とエージェント獲得の為のインセンティブ。同社株は月曜の市場終了後に20%下落、月曜終値は年初比で49%下落。

 

***ジャパン・トランスナショナル 坪田 清***

 

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