習近平氏を「中流層」からも不満の累積が襲う懸念が出る

 工事停止中のマンションのローン返済ボイコットは、SNS上に設置されたプラットフォームに書き込む形で、燎原の火のごとく広がった。

 わずか1年前には習近平氏の指導力は盤石に見えていたが、もともと無理な巨額投資であった一帯一路のプロジェクトの問題が各所で噴出、新型肺炎ではゼロコロナ政策に固執し市民生活も生産活動も犠牲になった。習近平氏への不満はかなり大きくなっている。

 今回の「ローン返済ボイコット問題は、当局によるSNSの検閲・削除で現状は不明だ。この問題が従来の物と異なるのは、これはもろに「中流層」が起こした反乱であることと、銀行そのものを直撃している事だ。

 中国は今までに何度も苦境を切り抜けてきたが、バランスシートを拡大して問題の破綻を防いでいた。問題が起こるたびに新たにはる「絆創膏」は大型になっていった。

 下に見るように、また「絆創膏」による対処療法を持ち出そうとしているように見える。 

 

***ジャパン・トランスナショナル 坪田 清***

http://www.japan-transnational.com/

 

 

中国習近平:一帯一路の超巨額出資があちこちでほころび 

(フィナンシャル・タイムズ電子版 2022.7.21・木)

 「一帯一路」構想により2021年末までに8380$(111兆円)が発展途上国へ投資されたが、今は記録的な数の事業で融資が不良化し中国はこの処理に追われている。以前は「世界銀行」と似ていたが、今は「IMF」と似た仕事が多い。中国の外貨準備はかなり減り、金融機関が一帯一路融資用に使えるハードカレンシーは僅かしかない。

中国習近平:ゼロコロナとデベ融資規制の両方を選ぶ事はできない 

(ブルームバーグ 2022.7.25・月)

 中国はゼロコロナ政策とデベ向け融資の上限規制を敷いているが、両方を同時に行えば経済は悲惨になる。モーゲージ危機の発火点だった鄭州では昨年販売のマンションの29%で引き渡しがされていない。上半期では大手34社の販売件数が前年比で53%下落した。新型肺炎のロックダウンは二度、4月と5月に実施された。

中国習近平:「モーゲージの返済ボイコット」は、政治的な武器ともなる 

(フィナンシャル・タイムズ電子版 2022.7.20・水)

 習近平にとり今は重要だ。救済実施の際に主要な地方銀行には総額6.8$(898兆円)もの不動産関連融資があり、以前からの不動産危機でこの一年間に4000行で預金取り付けが発生した。以前は中国工商銀行等が中小行を救済・合併してきたのだがこれはもうないだろう。大手行の株価は下落、今は簿価純資産額の33%なのだ。

中国習近平:習近平が直面したモーゲージ返済ボイコットという予想外の反乱

(ブルームバーグ 2022.7.20・水)

 IT会社、香港。上海のロックダウンといった強権を発動して来た習近平は、中流階級の住宅所有者達の反乱にあっている。中国では家計の富の7割が不動産だと言われる。住宅は一家の全資源を投入して買うので、これがマイナスの資産になると「生きるか死ぬか」の問題になる。習近平の目指す「共同富裕」の層の反乱なのだ。

中国習近平:モーゲージ危機で習近平が返済ボイコット鎮圧に使うアメとムチ

(ブルームバーグ 2022.7.22・金)

 当局は検閲の一方、銀行に融資をさせようとしている。中国は大衆の不満への対処には慣れているが、今回の抗議運動は局所的ではない。返済猶予を認めれば返済をしようとしない人も増える。下請け会社や部材業者、失業者や商店を閉店した人、新型肺炎の際の政策に不満を持つ人等にもこれが広がれば手に負えなくなる。

中国習近平:モーゲージ危機で中国が嵌った「市場のパラドックス」というワナ

(ブルームバーグ 2022.7.21・木)

 図面売りの契約時に実行されるローンをデベは無利子資金として使い、購入者は後年の竣工時までには相場価格が上昇していてハッピーだった。共産党が永遠に国民の富を拡大させると保証したので、皆は共産党に黙って従ってきた。今回は政府がデベや市場の規律への介入を行った事がもたらしたもので、国民の富が傷ついた。

中国習近平:ブームの時に中国に群がった外国企業が、今は考え直している

(ニューヨーク・タイムズ電子版 2022.7.28・木) 

 中国の最盛期は2016年で当時の様な高成長に戻る事はもう無いと考える企業が増えている。中国の中流階級は増加し続け、2025年には世界最大のラグジュアリー市場になるとする見方もあったが、今の中国人はケチになった。あるランバー業者は中国企業は買い付けの量は非常に多いが質は気にせず、安ければ良いという態度だ。