当方のブログ:
「ソニー」の名に泥をぬる『AI』=おうちダイレクトのAI価格査定は詐欺師に最適?
で「追記2022.7.2」とした部分のみを、ほぼそのまま下記に再掲します。
こんなものでも「AI・人工知能」だとソニーの名も使って自称するSREのAI査定アルゴリズムの構造を推測したい。
基本的にはサンプルからの比準だろう。比準の各係数に何を用いれば最適かをぐるぐる回して大量の計算しているのかも知れないが、99%が無駄な計算だ。例えば青森や鹿児島の物件をサンプルに加えた事で計算上の最適さが増したとしても、実際のマーケットでは渋谷の物件には青森や鹿児島の物件は、全く影響しない。世田谷西部や練馬の物件ですらも渋谷の物件に(短期的には)影響を与えることはまずない。つまり計算するだけ無駄だ。
サンプルを「売出価格」と「成約価格」のどちらで取っているかも問題だ。多くのまともな業者も消費者一般も「査定価格」=「売れる可能性が高いと推定する価格」と言う意味で使う。しかしSREが行う「査定価格の計算」のためのサンプルの中心は「売出価格」のようだ。
昨年、日経電子版で「SREが国土交通省不動産業課に成約データの開示の陳情をした」と報じていた。これはSREは成約価格データを(十分に)持っていない事を示している。「売出価格」をサンプルにすれば、高い査定価格となるのは当然だ。これは通常使われる語法としての「査定価格」ではない。「売出価格の査定」を「査定価格」と呼ぶのは消費者の誤解を呼ぶ欺瞞と独善にに満ちた語法で、「三文業者」が消費者保護制度の網の目をくぐったつもりでやる愚劣な話だ。
さらに、まともな不動産会社は近傍類似の物件をサンプルに比準を行うが、SREのアルゴリズムではこれも怪しい。「遠隔地であろうと類似していなかろうとAIにいろいろなサンプルをぶち込み、最も高く出た数字を『査定だ』」としているように見える。例えば「渋谷の築2年・3LDK」の価格査定で無数のサンプルと比準した結果、「青森の築20年・1DK」と比準した時に比準価格が最も高いという計算結果がでれば、これを「査定価格」とするわけだ。
実際は「渋谷で3LDK」を買おうと探している一般消費者が「青森の1DK」を視野に入れるはずがなく、これとの比準で「査定」する事は無意味だ。
また不動産市場は時間の経過に対して「動的」だが、これをどの程度アルゴリズムにを織り込んでいるかも、非常に疑わしい。不動産市場は「小さく細分化された市場」と「それらが織りなす全体の市場」の双方からつかむ必要がある。しかしSRE程度の「中規模の小」程度の営業規模でかつ社内に市場の熟達者がいない(いても機能していない)場合はこのような「動的」な変動をタイムリーに掴めるはずがない。統計を利用して可能なのは過去の検証に対してであり、現在の相場の話には使えない。これもプロなら実感的に分かる当たり前の話だ。
(追記2022.7.9)査定価格が高く出るサンプルを故意に選んでいる可能性
不動産取引ではある程度の幅の中の特定できないどこかで成約する。SREの査定では「最も高く成約した例ばかりをサンプルとして比準して査定している」可能性が高い。このようなサンプルの選び方を意図的にして査定価格を高くしているのか、高く出た査定価格のためのサンプルが高い実成約価格のものばかりとなってしまったのか、SREの社内のプロセスは分からないが、この2つは数学的には同義だろう。
以上のようにでも考えないと(たぶん公団か公社の)「1000万円」もしないであろう物件に「7057万円~7331万円」などという想像を絶する高い価格が査定で出るはずがない。一貫して言えるのは、SREのAI価格査定アルゴリズムは、不動産市場の経験年数が短く実取引の経験数も少ない人間が「ゲーム感覚」で作ったアルゴリズムのように見える事だ。
そしてここがSREの最大の問題点なのだが、(『ゲーム感覚に意味はない』とは言わない)出てきた査定価格が実際のマーケットから乖離していてもそれをチェックできず、そのままWeb広告に何回も載せ続けたという点から、SREは「不動産のドシロウト会社だ」として良い。ソニー系という出自の良さも、アルゴリズムを作っている人間がどんなに数学的に頭が良かろうが、所詮は不動産のドシロウトの制作物で、SREはそれを吟味できない「会社としてドシロウト」なのだ。
「自分たちはまじめだ」「だまそうなどとは微塵も思っていない」というのは、自分が犯した誤りについて自分を許そうとする、あるいは自分たちだけに通じる甘い言い訳だ。SREのWeb広告から誤認をした消費者は救われない。これは詐欺罪や広告の不当表示問題とは別のスジの話だ。SREは法解釈以上の事にも通じたもう少しマシな弁護士を探し、自分たちが負っている様々なリスクを吟味すべきだろう。
私が最も危惧するのは、このWeb広告に「ソニー」の名が使われていたことだ。海外の投資家に詐欺師が「この物件は『ソニー』の査定で7057万円~7331万円だ」と説明すると、信じてしまうところが出かねない。「ソニー」というブランドが国際的詐欺の道具となるわけだ。
実際、この逆の話はバブルの頃、日本人の海外不動産投資でたくさん見た。いろいろな形で話に乗せられて現地の相場の倍どころか10倍、あるいはほとんど無価値な物件に100億円単位のお金を出した企業もあった。SREは2022.7以降は個人向けをやめるそうだが、商業不動産では今までと似たような事をやろうとしているようだ。
SREのいい加減なAI査定に騙された、あるいはAI査定のいい加減さに気が付いた海外投資家は「(不動産のAIを見れば分かるように)ソニーが『AI』と言ったら、相手にするな」と世界中に言い広めるだろう。
「ソニー」はこんなばかな話で自社の名前の世界での信用に傷をつけかねない。
大丈夫なのか。
追記:SRE(旧ソニー不動産)のAI価格査定が滅茶苦茶にひどい事がある原因の推測