中国当局が言った「不動産テコ入れ策」がいつまでたっても具体化せず、失望感

 ひどい不振にある中国の不動産市場について当局は「テコ入れする」としたが、ありきたりな措置を除いて、その具体的内容が一向に明らかにならない。海外の投資家は中国はリスクが高いわりにリターンが低いとの認識が広がっている。

 

 上海のロックダウンが長引いているが、中国では広義のロックダウンは全国45都市に及び、対象人口は3.73億人と、全人口の約3分の1に及んでいる。新型肺炎による死者数が感染者の割に極端に少ないが、これは死亡原因の切り分け方の違いの模様。

 

 香港で大手不動産のトップで、タイクーン(大君)と呼ばれる人たちの北京政府へのすり寄りが目立っているが、今回は行政長官の候補の中で北京政府寄りの人間の推薦を決めた。

 

 ソフトバンクについては相変わらずネガティブな話ばかりだ。「出資先をIPOさせてその資金を次の投資に回し、またIPOさせる」という同社の投資事業の大前提が崩れている。いかがわしい話が多いに拘らず孫CEOが重用したがナヘタ氏は投資の巨額損で退職した。

 

 過熱がいつ終わるかと見られていたアメリカの住宅市場は、まだら模様の中、終了が近いという話が増えてきた。一次取得者向けローンの申請件数が減少、オンラインの検索数や物件見学ツアー数の減少などだ。ボイシ等の限界的な都市から価格下落が始まるだろう。

 

 住宅市場の過熱を終了させることになるであろう最大の要因はモーゲージ金利で、非常に短期間のうちに急上昇、5%となった。昨年末は3.11%にすぎなかった。

 

 超高層・超高額マンションの432パークアベニューの82階部分が7000$(89.6億円)で成約した。買主は低層階のハーフフロア物件を2387$(30.4億円)で買っていた人物。このマンションは騒音、水漏れ、エレベータの不調等で、デベに買主から訴訟が起きている。

 

 マイアミで中古マンション全体を買収、ラグジュアリーマンションに建て直すビジネスがリレイティッドを含めたデベの間で流行っている。これらの中古マンションは道路付けが良く海辺に面する等、立地もよい。マイアミでは昨年、マンションの崩落事故が発生した。

 

 ブラックストーンがマンハッタンで大幅に増床する。今回は入居中のビルの借り増しで、場所はミッドタウン。ビル所有者はボストン・プロパティーズ。

 

 ブラックストーンが学生寮の最大手、アメリカン・キャンパスを128$(1.64兆円)で買収する。同社は116施設で11.19万ベッド。ブラックストーンは昨年、戸建て住宅レンタルの会社を60$(7680億円)で、今年は賃貸アパート会社を58$(7420億円)で買収した。

 

 マンハッタンの金融地区はオフィスの空室が多く、アベイラビリティ(家主にとっての空室+サブリースによる空室)は一年前の17%から現在は25%だ。金融地区とはマンハッタンの南部で証券取引所や金融機関が多いエリアで、ワン・ワールド・トレードセンターもある。

 

 クラスAのビルは好調なのだが、BCのビルは数か月間のフリーレントが常態化し、テナントの入居に際して家主が負担するテナント改良工事費の相場が倍となり、2か月間のフリーレント+様々な特典、というケースも見られる。

 

 カナダの住宅市場は過熱が著しかったが、利上げ等でとうとう下落の気配を見せている。

 

 スーパーヨットはオリガルヒの蓄財手段でもあるが、欧米からの経済制裁を逃れるためにインド洋他を逃げ回り、これが面白おかしく伝えられている。プライベート・ジェットも類似の資産である面がある。いずれも処理した裏金で購入し、売る時はドル建てで売れる。

 

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<<中国の不動産市場>>

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中国住宅市場:いけいけどんどんの時代にはもう戻らないだろう 

(WSJE 2022.4.8・金)

 市場てこ入れ策や金融緩和がされ、これが華潤置地のような国有不動産デベの株価が直近で上昇している理由だろう。過去数年、新築住宅着工戸数は工事竣工戸数の倍以上だったが、昨年はとうとうこのギャップが縮まり始めた。建築過剰が何年も続き中国はもう住宅不足状態ではない。20年続いた盛況は突然反転しそうだ。

中国住宅市場:当局、「てこ入れ策」の具体をなかなか示さず (BB 2022.4.8・金)

 当局が市場をてこ入れするとしてデベ株は急上昇し始めてから3週間たち、未だに当局が本格的なてこ入れ策の具体を示さない事から、投資家の忍耐が試されている。当局が今までに示したのは、デベが融資を借りやすくする等のありきたりの策でしかない。国有の不動産デベの役割が増し、佳兆業もこれらと組んだ。

中国住宅市場:市場刺激策によりデータ的には住宅価格の下落速度が鈍化 

(BB 2022.4.15・金)

 3月の70大中都市住宅価格指数は前月比0.07%減少、2月の0.13%より減少幅が縮まった。但し上海でのロックダウン拡大の影響は反映されていない。60の自治体が「一世帯が保有できる住宅の戸数制限」や「一定期間以上所有した時のみ、売却できる」という制限を廃止、銀行も100以上の都市でモーゲージ金利を20-60bp下げた。

中国住宅市場:ロックダウンの影響で住宅販売戸数が7月以来の減少幅に 

(BB 2022.4.18・月)

 3月の新築住宅販売高は前年比で29%の減少をし、資金繰り難に陥っている不動産セクターにとって新たな打撃となった。中国政府は先月、「不動産セクターでの無秩序な破たんは防ぐ」とし市場のテコ入れ策の予定を述べたが、3月の半ば以降から新型肺炎の拡大が住宅市場に打撃を与え始め、20都市でかなりの影響が出ている。

中国住宅市場:政府の不動産市場へのてこ入れ策は販売増加には不十分 

(BB 2022.4.18・月)

 預金準備率の25bp引き下げ、銀行へ若干の資金注入、一年物金利の据え置き等、中国人民銀行は不動産抑制策を緩めたが、新築住宅の販売回復に殆ど繋がらなかった。中国のハイイールド債は3週間続いた上昇が止まり、海外の投資家は中国がリターンの割りにリスクが高く、習近平がプーチンと親しい事にも不信感を持っている。

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<<中国の個別デベの問題>>

中国デベ:恒大集団がオフショアの債権者の費用支払いに同意 

(BB 2022.4.5・火)

 恒大集団へのオフショアの投資家はフーリアン・ロッキー他からアドバイスを受けているが、恒大集団はこのアドバイス料を負担する事で合意した。オフショアの債券の価格は$=13¢程度。

中国デベ:碧桂園、「我が社への懸念は間違っている」としたがる 

(WSJE 2022.3.30・水)

 この一年間で中国のデベの10社以上がドル建て債でデフォルトを起こしている。碧桂園の社債は他社とは異なり投資適格なのだが、今月初めに40¢にまで下落、最近は回復を見せている。株価は一年で39%下落した。9社強が監査済みの決算公表が3月末日には間に合わないとしているなか、碧桂園は予定通り決算を発表した。

中国デベ:泛海集団がニューヨーク他から撤退しロサンジェルスに集中 

(BB 2022.3.31・木)

北京本拠のデベ、泛海集団はニューヨークとハワイの物件を損切り売却して現金化する。ロサンジェルスの物件はマンションとホテルの3棟からなり、3年間、建築途上で工事が停止していたがこれを再開する。建設会社が工事代金が支払われないとしていた。同社はアメリカ不動産に35$(4480億円)を投じていた。

中国デベ:正栄地産がデフォルト 

(BB 2022.4.11・月)

 当局が市場てこ入れ策を表明してから3週間が経つが具体的な大規模な施策が公表されない。そこへ正栄地産がドル建て債2本についてデフォルトの見込みとし、中国のドル建てハイイールド債は0.5-2¢下落、不動産デベ株指数は4.4%下落した。3週間続いていた株高・債券高に対してチェックが入った格好となった。

中国デベ:決算発表が出来なかったデベの株を売買停止 (WSJE 2022.4.1・金)

 不動産市場の悪化や監査会社の辞任でデベは期日通りの決算公表に苦労している。香港証券取引所は32社を売買停止にした。これらには融創集団、奥園地産、世茂集団、佳兆業が含まれている。

中国デベ:不動産の悪化でデベは自分たちの将来が読めず 

(WSJE 2022.4.7・木)

 先週、香港上場の中国の不動産デベのうち24社が監査済み決算書の提出期限に間に合わなかった。新築住宅販売、価格とも急落が続き、20年続いて歴史的な不動産ブームの終わりを実感させている。デベ上位100社の3月の販売は前年比53%減少だ。監査済みと出来たのは経営状態が良いデベに多い。

 

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