新型コロナで「みんながより豊かになった」というアメリカの意外

 日本はコロナの蔓延で今も苦しんでいます。アメリカも一時は日本以上に苦しんでいましたが、各種の対策を集中的に総動員し、健康面や文化やレジャー等々は大きく損なわれてまだ回復途上です。しかし意外な事が起きました。たぶん、大量のマネーをつぎ込んだせいでしょう、「金銭面」だけを見ると大部分のアメリカ人はコロナ前より豊かになったのです。 

 

 このねじれた現象は株価や住宅価格が上昇したことが主因です。金持ちの資産は大きく増え、そこそこの人の資産はそこそこ増え、それほど持っていなかった人もより貧乏にはなっていません。グッチやコーチなどの有名ブランド品は売り上げを大幅に伸ばしています。

 

 住宅で見てみましょう。

 

 昨年の3月にコロナへ突入しましたが、7月にはもう市場は持ち直しという話が出て、秋、冬、年明けとどんどん上昇に加速が付きました。全国の戸建のメディアン価格は今年の第2四半期では前年比で23%上昇、テキサス州のオースティンに至っては47%上昇です。現在は過熱が続いているという話と、かすかに冷え始めているという話があります。

 

 市場の過熱を示す逸話を幾つかご紹介しましょう。

 

 中古住宅へは買いのオファーが50-100件も集まるというのが常態化しました。オファーの際に「自分たち家族はいかにあなたの家を気に入っているか」を切々と書いた、通称「ラブレター」という手紙を添える事が多いのですが、これはコピペで書かれたものです。

 

 人気物件のオープンハウスの日は、家の外の道路に見学希望者を一列に並べて「一組15分だけ」として中を見せているケースもありました。

 売り主が思いもよらない物、例えば「トイレの最高級モデルの洗浄便座」や「イタリア製のキッチン」を取り外して持っていくという条件の物件もありました。これは港湾の混乱で物流に支障が出ていて、資材がいつ届くか分からいという状況の為でもあります。

 

 住宅の「裏庭」も、当初はビニールのプールやトランポリンを置くという程度の話だったのですがだんだんヒートアップしました。本格的なプールを作り、冷蔵庫を備えたカバナ(東屋)と屋外キッチンを備え、さらに焚き火コーナーに日除け付きのパティオを設けるなどです。売ろうとしている訳ではないのですが、ここまでやると住宅の評価額があがります。屋外キッチンで2.2%、バー付きのパティオで3.4%、評価額が上昇するのだそうです。

 しかし、実際に「裏庭」を作った体験者は、暑いし虫は多いしで大変だったとしています。ボトルを箱に入れて乗せて運ぶ乳母車のような手押し車があるそうで、各所を行き来する時にはこれが非常に便利だったというのですが、あんまりリッチな感じは受けません。

 

 なお住宅価格はアメリカだけではなく世界規模で上昇、OECDは先進国40か国中で37ヶ国で上昇したとしています。「世界同時住宅バブル」を懸念する人もいます。

 

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