恒大集団:中国政府による処分方法が道半ばまで見える

 超巨大破綻となる恒大集団の処理方法について、あらすじが見えてきた。

 ただし見えているのは「半分まで」だ。

 

 まずこの「半分まで」を進めながら、中国は次の手を選択肢の中から選ぶつもりだろう。つまり「後半の進め方」は未定だと思われる。

 

 「半分まで」は同社の手元キャッシュが尽きないように銀行を通じてコントロールしながら、現状の民間会社のままで資産と借金の圧縮をする。

 

 これでどれだけの負債が残るかにより「後半の進め方」を選択肢の中から選ぶ。

 たぶん「後半の進め方」のモデルとなるのは安邦保険だろう。この段階のどこかで恒大集団の許家印CEOは逮捕され投獄となる。当局は金融秩序が壊れないように見図りながら、同社を圧縮していくことになるだろう。

 

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関連ブログ:世界最大の借金デベ・恒大集団と、デフォルト慣れしてきた中国

 

      恒大集団、香港上場親会社とCEOを生贄にして国内金融秩序の維持を図る方向?

 

**「恒大集団の株価急落」以降の主要英文記事・抄訳

 

<<恒大集団:裁判所による銀行預金の凍結で株価が急落>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2021.7.19・月)

 江蘇省の裁判所が恒大集団の預金1.32億人民元(22.3億円)を凍結した事から、恒大集団の株価は月曜日に16%の急落をした。裁判所に凍結を求めたのは広発銀行で、預金凍結の話は週末に広まった。同社は過去に何回も危ないとされた。ドル建て債でも巨額の借り入れをしていて、政府がどの程度の支援に入るかが注目されている。

 

<<恒大集団:今まで何回も情報が外れた事にマヒしている投資家への警告>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2021.7.19・月)

 超低金利の時代に、恒大集団の2025年物8.75%の社債価格は62.6¢で、これは年25%と中国のデベのドル建てジャンク債の中でも最も高い。政府によるデベに対する融資制限で、同社はノンバンクからの信託ローンが総負債の40%もあり、ますます高い金利の資金調達に追い込まれている。今年のデフォルトの4割は国営企業だ。

 

<<恒大集団:皆が狙っている258$(2.8兆円)の現金>>

 (ブルームバーグ 2021.7.20・火)

 恒大集団の許家印会長はある時は香港の富豪達へのコネで、ある時は共産党100周年パーティへ登場する事で危機を乗り切ってきた。フリーキャッシュは258$(2.8兆円)だが、2月には中国最大の工業団地デベの華夏幸福が数か月前の現金保有高を突然大きく切り下げて投資家を驚かせ、その後にデフォルトをした。

 

<<恒大集団:2物件の販売の一時中止で株価や社債の下落が一段と深まる>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2020.7.20・火)

 恒大集団の湖北省の市が、マンション2物件について「事前販売したファンドが資金不足」であるとして月曜日に販売の中止を命令した事で、同社の株と社債は一段と売り込まれた。販売は火曜日に再開され、株価と社債価格も回復した。株価は月曜に16%下落し、火曜にはさらに10%下落した。同社は頭金が重要な資金繰りだ。

 

<<恒大集団:長らく言われていた超巨額借金の問題、とうとう審判の時か?>>

 (ウォールストリートジャーナル電子版 2020.7.20・火)

 恒大集団は長らく所謂「灰色のサイ」で何回も危機を乗り越えてきたが、今回はかなり難しい。社債の償還期は20223月まで来ないが、2000$(22億円)の預金凍結で市場評価額が42$(4620億円)も吹き飛んだ。3月末の有利子負債は1040$(11.4兆円)だが、未払い費用の950$(10.5兆円)などの勘定が増加している。

 

<<恒大集団:社債に対して認められた担保評価は53%のディスカウント>>

 (ブルームバーグ 2021.7.21・水)

 ボンド担保で資金を融通しあうレポ市場で、恒大集団の2023年満期の元建て債の担保評価は53%のディスカウントとなった。4月には28%、昨年10月の危機時は57%のディスカウントだった。国内の格付け機関はAAAとしている。恒大集団は資産売却の準備も進めているが、大手国有銀行の中にはもう融資を絞っている所がある。

 

<<恒大集団:銀行との対立が解消したとの事で株価が急騰>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2021.7.22・木)

 恒大集団は湖北省での2つのマンション事業に関連して起きていた銀行との言い争いが解決したと発表、株価は木曜、9%上昇した。47¢に下落していた2025年満期の社債は51¢に回復した。同社株は年初比で46%下落している。先週金曜は特別配当を検討しているとの話で10%上昇、粗い値動きが続いている。

 

<<恒大集団:終末の付け方はパートナーシップか各部門のIPOか叩き売り>>

 (ブルームバーグ 2021.7.23・金)

 許家印CEOは今回の危機は昨年、友人を頼って切り抜けた様にはいかない。過去に問題を起こした大企業の例には大連万達、HNA、安邦保険があるが、いずれも資産売却を行った。恒大集団については国営の金茂ホールディングや万科企業が検討しているとの話があるが、狙いは大湾区での保有資産とされている。

 

<<恒大集団:香港トップの銀行群がマンションへのモーゲージの提供を停止>>

 (ブルームバーグ 2021.7.21・水)

 香港の4つの大手銀行HSBC、中国銀行香港支店、ハンセン銀行、東アジア銀行が、恒大集団が建築中の2つのマンションへのモーゲージ融資を停止した。このような動きが協調するのは稀だ。恒大集団は他に幾つもの銀行と取引があり今回の話でも支障はないとしている。マンションは1棟が50%、もう1棟は97%、販売済み。 *記事のピックアップ漏れを回復した。

 

<<恒大集団:銀行少なくとも2行がモーゲージ融資停止の姿勢を見直しか>>

 (ブルームバーグ 2021.7.23・金)

 香港のHSBCと中国銀行香港支店は恒大集団の未竣工物件へのモーゲージ融資を停止していたが、香港通貨庁から問い合わせがあり停止方針を見直そうとしている。ハンセン銀行と東アジア銀行も今週、恒大集団のマンションへのモーゲージ融資を停止している。恒大集団は現状の計画を変えず一物件は8月に、もう一物件は10月に引き渡すとしている。

 

 *(注)中国政府には「恒大集団を成り行き任せとはしない」との意向があって?、

    香港通貨庁の問い合わせはその意向を受けてなされたものか?

 

<<恒大集団:大型の特別配当を検討か>>

 (ブルームバーグ 2021.7.26・月)

 恒大集団の許家印CEOは株価を上げて信用回復を図る為に特別配当の実施を検討している模様だ。同社は2018年に特別配当を実施して株主に報いたが、2019-20年は利益が減少した。恒大集団は株式の77%を許CEO8.9%を親密なポーカー仲間の富豪が所有しており、配当金は「リサイクル」される事になる。

 

<<恒大集団:特別配当は実施しないと、予想外の動きに出る>>

 (ブルームバーグ 2021.7.27・火)

 恒大集団は2週間弱前に役員会で議論した特別配当計画を取りやめた。許CEOは手元資金は十分にあるとしているがS&Pは月曜、同社にこの1ヶ月で3回目になる格下げをした。火曜朝の同社株は9.1%下落、年初からの下落幅は59%となった。同社には預金凍結、販売停止、モーゲージ融資等の問題が立て続けに起きている。

 

<<恒大集団:スパイラルに拡大するデットの危機>>

 (ブルームバーグ 2021.7.28・水)

 許家印CEOを取り巻く状況は悪化の一途で、今や中国の金融で最大の懸念材料だ。許された時間があまりなく、社債の償還は来年3月に20$(2200億円)、来年全体では74$(8140億円)だ。許CEOが打てる手が尽きた時に政府がベイルアウトに入るかどうかが問題だ。冷たい態度に出る銀行群が増えている事も懸念される。

 

<<恒大集団:大騒ぎとなった一週間が終わり、同社の手元流動性へまた懸念>>

 (フィナンシャル・タイムズ電子版 2021.7.28・水)

 恒大集団は中国の都市化の波に乗って急拡大してきた訳だが、「金詰り危機」にある。単純に「手元にお金がない」状態なのだ。中国の「事前販売(:日本で言う図面売り)」というビジネス・モデルに疑問が出され、非常に不安定で売れ行きが悪化すると逆回転にはまるのではと見られている。子会社売却等による資金調達は考えられる。

 

<<恒大集団:年初に同社株暴落を予言したアナリストがさらに40%下落と見込む>>

 (ブルームバーグ 2021.7.27・火)

 1月に「恒大集団株は半額以下になる」として的中させたUBSのアナリストが、目標株価を40%下げた。

 

 <<恒大集団:また新たに資産凍結がされ、株価も社債も下落>>

 (ブルームバーグ 2021.7.30・金)

 恒大集団の国内上場の子会社が裁判所から3年間の資産凍結を命じられ、恒大集団株は9.2%急落して20171月以来の安値になった。当該子会社と武漢の国有建設会社の間で発生した問題で詳細は不明。恒大集団では広発銀行と2000万億$(22億円)の預金凍結、鉱山会社への200万元(3400万円)の未払いといった問題も起きた。

 

<<恒大集団:資金難を避けるべく資産売却を急ぐ>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2021.8.2・月)

 恒大集団は香港上場のインターネット会社について保有している38%分のうち7%・4.2$(**億円)を売却した。同社にとって電気自動車会社株、旅行会社株、ミネラル・ウォーター会社株の売却は重要な選択肢だ。

 

<<恒大集団:ムーディーズが格下げ、広告会社からは資産凍結請求>>

 (ブルームバーグ 2021.8.3・火)

 ムーディーズは恒大集団を2ノッチ下げてCaa1(他の格付け会社のCCC+に相当)としネガティブ・アウトルックとした。6月末にも格下げしている。先週はフィッチとS&Pが格下げしている。また広告会社のレオ・グループは支払いを受けられないとして訴訟を起こし、深圳の裁判所に恒大集団の資産の一部の凍結を求めた。

 

<<恒大集団:同社の社債への空売りがさらに増加>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2021.8.4・火)

 恒大集団の社債の貸し出しは6月月初の倍以上になった。2022年満期の社債・20$(**億円)のうち1.7$(**億円)が貸し出されている。借りた側は市場で売却し、後に安く買い戻す事を狙っている。同社の有利子負債は3月末で6470億人民元(**兆円)だ。デベの社債は年初から13%下落と、大きく値下がりした。

 

<<恒大集団:資産売却を模索>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2021.8.6・金)

 恒大集団が売却可能な資産としては、海南島の巨大リゾート、電気自動車、サッカーチーム等、不動産以外で820$(**兆円)ある。S&Pは昨日また切り下げてCCC-とし、手元流動性が急速に減少しているとした。ボトル水やストリーミング、15ヶ所のテーマパーク等を叩き売りしても巨額の債務の前では大した額にならない。

 

<<恒大集団:裁判所への懸念や格下げで、社債がさらに売り込まれる>>

 (ブルームバーグ 2021.8.6・金)

 債権者からの恒大集団への訴訟が広州の法廷へ集中された模様で、これはHNAや方正集団、華夏幸福といった大型倒産の時と同様だ。恒大集団を政府なり習近平主席が「大きすぎて潰せない」という対象に判断するかどうかが注目される。ネガティブなフィードバックがネガティブなニュースを呼ぶ悪循環サイクルに入っている。

 

<<恒大集団:社債や子会社の株価が上昇>>

 (ブルームバーグ 2021.8.100・火)

 恒大集団が電気自動車会社株や不動産サービス会社株を国営企業他へ売却協議中との報から、これら子会社の株や恒大集団の社債価格が急騰した。売却により資金繰りを付けようとの考えだが、他に売却可能な部門はペットボトル水会社、遊園地や旅行業の資産があり、非コア事業で保有するエクィティは800$(**兆円)だ。

 

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