アメリカではワクチン接種が急速に進み、社会の正常化が間近に近づいている。しかし直近のデータでは、オフィス・ワーカーの「オフィス復帰率」は都市によってまだかなりばらつきがある。最も復帰が進んでいるのはテキサス州のヒューストンやオースティンやダラスで、5月初めの時点で40%台の半ばだ。
反対に最も低いのはニューヨークとサンフランシスコとで、10%台の半ばだ。
テキサス州でオフィス復帰率が高い理由としては、自動車通勤がほとんどである事や主要なオフィスが郊外にある低層建物だからだという。
ニューヨーカーのオフィス復帰を妨げている最大の要因が「地下鉄が危険だ」という話なのだが、日本では想像できない理由だ。乗客が一車両に一人か二人という事もあり、恐喝やいやがらせが多発していると、市民たちは思っている。一方、警察や地下鉄会社は一般に噂されているほどは深刻な状況ではないと発表、同時に警官や警備員の数を大幅に増やした。
これは「にわとりと卵」と似た問題に心理的問題が加わっている訳だ。
マンハッタンには個人商店が非常に多い。レストラン(食堂)、小売店、床屋ほかだが、これらの小規模店はオフィス・ワーカー達がマンハッタンに戻ってくれないと経営が成り立たず、限界が近づいている。
この問題もあり、市長のデブラシオ氏が立ち上がった。ニューヨーク市最大の雇用主はニューヨーク市役所でありその職員数は8万人だ。彼らから地下鉄利用の際の不安を除去するために作ったシステムが「通勤仲間たち」という市職員を対象にした一種の掲示板である。
「何駅に何時集合」という掲示板で地下鉄や列車に乗る市職員の仲間を募り、「みんなで乗れば怖くない」という仕組みである。うまく機能しているかどうかは、まだ報告がない。
オフィス復帰のために企業が独自に実施している例としては、出社した社員はマグカップや室内履きをもらえるとかの例はかなりある。しかしこれらはケチな方で、くじ引きでカリブ海のリゾートの滞在や電気自動車のテスラがあたるという会社もある。
オハイオ州に至っては、ワクチンの接種を受けると100万$(1.1億円)あたるという抽選を5週間連続で行う。さすがアメリカ、額が豪快だ。アメリカン・フットボールの協会は景品として無料入場券の提供を申し出た。
ワクチン接種については当初はアメリカでも日本と同様、いろいろもたもたしていたのだが、腰を据えるとものすごいスピード感だ。日本では決めた後は関係各所の調整も済んでいて非常にスピーディに物事が進むのだが、今回はもたもたしている時間が長すぎる。
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