「在宅勤務を主張する部下」の成績査定を下げるための出題:IRR

 評論家やコンサルタント、メディアの記者の「リモートワークや在宅勤務」での見立ての誤りが、アメリカのワクチン接種の広まりで一年も持たずに次々とバレている。

 

 そこでだ、あなたが不動産関連の課長だとしよう。

 「在宅勤務で業務をこなせる」と主張する困ったちゃんの部下が、「これでは自分のボーナスや昇格の成績を下げられても仕方がない」と納得する課題をお教えしよう。

 

 「この投資案件について『IRR(内部収益率)』を何ケースかで出して、かつその計算過程を示してくれ」という課題だ。

 「IRR」とは何かと聞かれたら、「自分でネットで知らベてくれ」と言えばよい。

 そして同じ課題を「IRR」に通じている他の部下にも出すのだ。「IRR」は今はエクセルの関数に入っている。分かっている人間には30分もあれば十分だ。「困ったちゃん」は3日はかかるだろう。

 そして困ったちゃんに「30分」と「3日間」の差を告げ、「君は生産性があまりに低すぎる」と言い渡せばよい。

 

 これは「困ったちゃん」をいじめようという話ではない。

 

 もし彼がオフィスで勤務だったら、まわりの誰かが助け舟を出してくれただろう。私が指摘したいのは、「オフィス勤務と在宅勤務の圧倒的な業務効率の差」である。マーケットで相手がいたら、話にならない圧倒的な差だ。

 「在宅勤務だ」、「リモートワークだ」と言っている評論家やコンサルタントの方々には、マーケットでの勝負勘が見られない。彼らはマーケットで勝負をした事がない人たちなのではないか?こんな人たちの話を真に受けて聞いていたら、ビジネスでは取り返しがつきませんよ。

 

 なお「IRR(内部収益率)とはなにか」だが、私が説明すると「入金の現在価値割り戻しと出金の現在価値割り戻しの値が一致する割り戻し率」となる。

 これが文科系が中心の不動産業界の人間には、なかなか分かってもらえない。

 セミナー会社さんで「不動産投資利回りの各種」でレクチャーをした時、皆さんがいちばん知りたがっていたのが「IRR」だった。エクセルで数字は出るが、なんのことやらわからないという訳だ。そこで「現在価値割り戻し」の話をしたわけだが、分かってもらえない。どう説明すれば高校数Ⅱレベルの数学が怪しい、数学の基礎的素養が欠けている人たちに了解してもらえるのだろう?

 

 昭和50年代、私はIRRなんてバカにしていた。計算は明らかに面倒そうだったし、仮定の数字をあちこちに置きまくってその計算方法を解明してもゴリヤクなどまるでない事は明らかだ。

 ところが、先日は東大の数学科卒業の方が「IRRを電卓で計算する方法」というセミナーの講師をされていた。今の時代にIRRを電卓で計算する根性があるというのだ。さすがに東大の数学科は恐るべしだ。「数学」は時としてとてつもない単純計算の累積、という羽目になる学問でもある。

 たぶんだが、IRRは1970年代くらいにアメリカの金融業界で「頭が中途半端にいい(=数学の世界では頭が悪い方に入れられる)人たち」が理屈と観念だけで考え付いた代物だと私は思っており、もっと簡便かつ重要で役に立つ「利回り計算」は不動産ビジネスでは他にいくらでもある。

 

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