世界の不動産の話は面白い。
不動産に対するメンタリティが日本人と最も似ているのは、中国人なのではないだろうかと思う話がよくある。アメリカ人の話は理屈を考えて頭で理解するわけだが、中国人の話はスケールのばかでかさに慣れてしまえば、我が身に照らしてクスッと笑ってしまうわけだ。
私が初めて中国に接した32年前、中国人はまだ「不動産を私有する」ことに実感を持っていなかった。10年後、中国の学生たちの前で自分の勤務先は「三井不動産(サンセイプートンチ)」だと言ったら、爆笑が起きた。たぶん「不動産(プートンチ)」というたぶん中国語にない表現が面白かったのだと思う。
英語にも「不動産」と一対一対応する言葉はない。厳密言えばあることはあるが、めったに使われない。資産を「動かせるもの(動産)」と「動かせない物(不動産)」にまず二分するというのは明治時代に大陸(たぶんフランス)から輸入した考え方なのだろう。
本書では不動産という言葉がない世界での不動産ビジネスを語るわけなので、もどかしさを感じる方もいらっしゃると思う。
それでも地球儀を見るように、外側から見た方が分かりやすいこともあるのだ。
(「世界から日本の不動産を知る」・2020年1月刊から)
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