ホテルは新型コロナで最も大きな打撃を受けた不動産セクターです。そのような中で業界世界最大手であるマリオットがホテル需要の回復に期待して、「オール・インクルーシブ」のリゾート会社と大型の提携関係を結びました。
「オール・インクルーシブ」というのはまさに「込みこみ」という意味です。ホテルの宿泊費に「全ての食事、プールやアスレチック等の諸施設の利用」なども含まれます。日本の和風旅館はこれにかなり近いわけですが、アメリカではこの手のタイプのホテルは殆どがカリブ海にあり、これに特化した専門会社が運営しています。
「安く上げる家族旅行の定番」というイメージが強いのですが、マリオットは2019年、この分野に「ラグジュアリーなオール・インクルーシブ」という新しい切り口で参入しました。今回は専門業者の中では大手のサンウイングという会社と提携先し、メキシコ、ジャマイカ、コスタリカなど、カリブ海周辺で一挙に19施設、7000室弱を加えます。
各ホテルの名称はマリオットのブランドの一つ、「オートグラフ・コレクション」に変更されます。マリオットの予約システムやロイヤルティ・プログラムにも加わるのですが、経営はあくまで従前の会社が行います。いわゆる「ソフト・ブランド」と呼ばれる契約です。
今回のマリオットの戦略について、おもしろい見方がされています。
新型コロナ後のホテルでまず復活したのは近場でのんびり過ごす「ステイケーション」でした。今後もレジャー需要が先に復活、ビジネス需要はその後ではないかと見られています。
大抵のホテル会社は顧客囲い込み(優遇)制度を持っていて、利用に応じて顧客に「ポイント」を付与してそれがたまると使える「メニュー」が用意されています。
マリオットはポイントの付与の時点で気前が良く、また使えるメニューも非常に魅力的です。例えば「ヘリコプターでのニューヨークの夜景飛行」とか「プロのサーファーによる2時間の個人レッスン」など種類も多彩で、ポイント獲得のためにマリオットに泊まる人さえいるそうです。
今回のオール・インクルーシブの拡充で狙っているのは、出張族が出張でため込んだポイントを、家族連れでここで使わせようという作戦ではないかとも言われています。
家族4人でバケーションとなれば、どんなにポイントが溜まっていても足りないでしょう。差額は支払うことになるので、マリオットとしては元は取れるはずなのです。
(追記)マリオットのソレソンCEO(62才)の逝去が伝えられている。マリオット家一族以外の人間で初の同社トップとなり、スターウッドの買収などで同社を圧倒的的な世界最大のホテル会社にした方だ。同社のチェーンは彼の努力で現在、世界で7500施設にも達している。合掌。
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