旧ソニー不動産(SREホールディング)の現状を久々にチェックした。東証1部上場だそうだ。
鳴り物入りで喧伝していた「おうちダイレクト」だが、これ、現状は「『おうちダイレクト』という名称で誤認を与えて消費者を呼び込む『おとり』の為の言葉」として使われている。
「おとり行為」は不動産業界の名のある大手はご法度としてやらない行為だが、ソニー本体の不動産子会社担当部門は不動産業界での「おとり行為」が持つ悪質性や重大性を知らないのだろう。
私はソニー本体自体は決していかがわしい会社だとは思っていない。しかし異業種である不動産業界での「おとり一般」の悪質性や重大性には鈍感か無知なのだ、きっと。
不動産子会社自身はもう業界歴が5年以上になるので、十分承知でこの「おとり」をやっているはずだ。
「東京」「神奈川」の「マンション」「一戸建て」の合計4ページを見たが、どのページでも「おうちダイレクト」の登録物件、完全に「ゼロ」だ。
一方、ページの左半分には非常に多くの他社広告が載っている。
これでどうやって儲けているのかはだいたい想像がつくが、証拠がないので別の機会に追及しよう。
これではどう見ても「おうちダイレクトという言葉でサイトに誘引」し、実際には「おうちダイレクト物件は存在せずに仲介業者が介在する物件に誘導」している。「おうちダイレクト」という言葉は「おとり」なのだ。
不動産業界には「公正取引」「広告基準」ほかの消費者保護の制度があるのだが、ソニー本体が属するビジネスではこれらはないのだろうか。自分が提供するブツが良ければそれで良しという業界なのかもしれない。だとしたらずいぶんと単純な業界だ。
私の感覚ではソニーの不動産子会社のこの行為はアウトではないが、消費者が「ソニー」というブランドに期待するものからは大きく外れる。不動産の大手なら、こんなケチな話で企業の信用やブランドが1ミリたりとも棄損するようなリスクはとるはずもない。
ちなみに私が昔見た、本物の「おとり物件」の概要はこんな感じだ。
60坪くらいの土地で相場4000万円の地域で、売値が2000万円とある。明らかに安い。
なだらかな西傾斜を造成した中の一区画だが、階段を十段強おりると長さ15mくらいの舗装道になり、また階段を十数段下りる。売り物件となっている区画はこの舗装道部分に接道していた。つまり車ではこの区画には上からも下からも入れない。消防車も救急車も工事用資材を運ぶ車も入れない。舗装道以外の三辺は粗造成の状態で、石積みか擁壁にたぶん1000万円以上かかる。古家があり年配のカップルが出てきてどこかへ消えた。
こんな物件は普通の消費者は買うわけがないのだが、チラシ広告にこれをのせれば「集客」にはなる。ようするに「おとり用物件」なわけだ。公図の上では完璧な土地だろうから「担保用」としてなら評価してくれる銀行がある可能性があり、元付けの業者さんとしてはこれを理由に「おとりではない」と開き直ることができるのだろうが、まあその程度の業者さんなわけだ。
まぎれこんで、まともな業者さんのチラシにも入ってしまうことがある。ときどき素人さんのクレームで、「この物件を見せてほしいと頼んだのに業者さんが見せてくれない」という話があるが、そのうちの何割かはこれのようなおとり物件なのだろう。
売る事には法的には何の問題もないので「おとり」としての利用価値があるわけだ。
ソニー本体のポリシーの問題だから、子会社にこんな「おとり的行為」を許しておくのかどうかはお任せします。
(以前のブログ)
(追加のブログ)
ソニーが不動産子会社にやらせている「エージェント」のウソと猿まね
ソニー必見:「不動産エージェント」ならアメリカでは顧客に何をしてくれるか
(2021.2.17追記)
某証券会社のサイトによれば、ソニーのSREホールディングスへの持ち株比率は42.61%に減っていた。依然として圧倒的大株主であり、(法律用語としてはともかく)日常用語としては「ソニーの子会社」といってよいだろう。
ソニーが100%子会社で不動産事業に参入した2015年前後、不動産業界に対して行われたおびただしい数のネガキャンはあくまで「ソニー(不動産)」の名前で行われ、当時は「SRE」ではない。
「子会社の社名を変えて持ち株比率を落としました」で、この事実から逃げ切れるとでもソニー本体は思っているのだろうか?