ウォールストリート・ジャーナルは大好きな新聞なのだが、妙な癖がある。
自分の思い込みを修正できずに、しつこく書き続ける記者が時々いるのだ。
今回は前にも書いた「在宅勤務礼賛」関連の話だ。
今日の記事では「フェニックスの銅採掘会社が中心部にあるオフィスを潰して郊外のサテライトでのリモートワークを検討中」としているのだが、よく読めばぜんぜん内容のない話だ。
同紙はほかのメディアが「在宅勤務礼賛・一辺倒」から方向転換を図っている時に「礼賛・一辺倒」の記事を載せ続け、編集局が同紙のコラムとしては異例に大きなスペースで「論調を方向転換する」と宣言した。各記者にいい加減にせい、と言ったわけだ。
同紙には「自分の思い込みを修正できずに、しつこく書き続ける記者が時々いる」という例では、三峡ダムの貯水開始時の報道がある。
この時にも今年の夏と同様な、「三峡ダムは倒壊する?」という話があった。
ウォールストリート・ジャーナルは連日、危機がせまっていると大報道を続け、瑣末な話まで大きな紙面での報道を続けた。
今年の夏と違い、この時は初めて満水にしたので「倒壊の可能性の危機に終わり」がない。
結果として、大恥をかいたわけだ。
もう一つは東日本大震災の時だ。福島原子力発電所の水素爆発の第一報についてのウォールストリート・ジャーナルの報道はすばらしかった。本当に素晴らしかったのだ。
しかし「ルーティング」を取り上げた記事がひどかった。
「ルーティング」というのは例えば「地震による避難で家人や店員がいなくなり、鍵もかかっていない建物に入りこんで盗む」という犯罪形態で、「爆撃」とか「暴動」の時にも発生する。
こんな形で無人になった家に入り込んで何か盗もうという話は、日本人はなぜか思いもつかない。しかし世界中でこういう時にルーティングが発生しない国は日本だけのようだ。
従って日本語にはルーティングのような犯罪行為を表す単語がない。
あえて訳せば「略奪」だが、ルーティングでは人への乱暴狼藉は起きないのでかなり違う。
諸外国の人には、「お金が入った財布を落としてもそのまま戻ってくる」というのが信じられないのと同様に、「ルーティングが発生しない」というのも信じられない。
ウォールストリート・ジャーナルの記者は地震の後に福島から東北地方を北上して縦断、各地で「ルーティング」の痕跡を探し回った。
そのルポが一面全面だったか、両面見開きだったかで載った日があった。
たしか「窃盗」みたいなのはあった。
「ルーティングが起きないはずはない」という思い込みにとらわれ、「ルーティングが起きていないのを自分の目で見てもまだこの思い込みを捨てられない」・・・
ウォールストリート・ジャーナルの「在宅勤務礼賛」メンタリティの記者はきっとこれと同類なのだろう。
同紙やフィナンシャル・タイムズやニューヨーク・タイムズはどの記事も水準が非常に高いと思う。
だから上で書いたような記事に、より、がっかりしてしまう。
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