スタンプ税の時限的非課税でイギリスの住宅市場は活況に見えるが、長続きはしない?

 イギリスの住宅市場への見方が難しい。ロックダウンによる需要の積み上がり、住宅市場刺激の為の「スタンプ税(注:印紙税、不動産取得税に類似)の時限的非課税」で総論としては現在は活況にあるのだが、これは長続きしない、あるいは急落するという見方がある。

 ロンドン、特に中心部は依然として不調という報(FT)と、上昇を始めたという報(BB、WSJ)がある。ロンドンの郊外部は好調で、需要は郊外のさらに外側へも拡大している。

 

 フランス最大のSC会社、ウニベイル=ロダムコ=ウエストフィールドが格付け維持のために債務削減に励んでいる。同社債務は2018年のウエストフィールド買収で膨らんだ。もっとも時価総額はNTVに対し6分の1で、仏クレピエール、英ハマーソンは10分の1だ。

 

 アメリカのホテル業界は新型肺炎で苦境にあるところが多い。特にビジネス客の復活の展望が見えていない。CMBSの中でホテル紐づけのものが多い物は、スプレッドのコストが増加している。不良債権の増加に備えて、特別サービサー会社は人員増加をしている。

 

 オフィス復帰について対応が分かれている。JPモルガン他がスタッフの復帰を促している中で、みずほFGとドイツ銀行はともにマンハッタンでもリモートワークの併用で借りている床を減らし、スタッフにはオフィスへの完全復帰を求めない。

 

 ニューヨークでは住宅賃貸が借り手市場になっており、「どうやってうまく家主と交渉するか」という記事が目立った。フリーレントと仲介業者への手数料の肩代わりが中心。

 

 モーゲージで問題が二つ出ている。回りまわって機関投資家ではなくFedがMBS購入の形でこれを大量に買っている。またモーゲージの借り替えにより平均6万$(636万円)がキャッシュアウトされ、手続きの一部が自動化されて、サブプライム問題と酷似している。

 

 「特別買収目的会社(SPAC、白地小切手会社)を利用した裏口上場の増加が疑問視されている。SPACを用いる上場には以前から批判があったが、今年は特にこの上場が多い。ソフトバンク出資のオンライン不動産仲介会社、オープンドアもSPACによる裏口上場予定だ。

 

 中国デベ二位の恒大集団で子会社の上場問題を契機として一時、信用懸念が起きた。同社はデベで世界最大となる債務1200億$(12.7兆円)を抱え、「大きすぎて潰せない」――下手に潰すと金融システムが打撃を受けかねない。当局は支援を与えた模様。

 

 東南アジア・大洋州の話題がいくつかあった。/シンガポール:オフィス復帰制限を緩和/タイ:近隣諸国からの観光目的の入国を緩和/マレーシア:不動産会社の大型新規上場/オーストラリア:シドニー西部の酷暑の住宅開発/ニュージーランド:外国人不在の観光地

 

 相変わらずお騒がせのソフトバンクだが、今回はIT大手株の巨額の個別株オプション(通称「ナスダックのくじら」)とソフトバンクGの非上場化の観測が話題となった。同社に巨額損失をもたらしたWeWorkには、リモートワークから追い風が吹いている。

 

***ジャパン・トランスナショナル 坪田 清***

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