フィナンシャル・タイムズとウォールストリート・ジャーナルにはよく「ダジャレ」が出てくる。「ダジャレ」の実数は私が気付いている個数の10倍以上はあるだろう。
日本語が達者なマイケル・マカティア氏やデイブ・スペクター氏はどうしようもないダジャレを連発するが、これは個性というより文化的なもののようだ。
例えば、「ミッキーとミニー」では、日本語でも「ミ」が共にあり、苦しいがダジャレだ。
しかし「ミッキー・マウス」は日本語ではダジャレだとは認められないが、英語ではともに「M」で始まる立派なダジャレで、格調高く言えば「頭韻」を踏んでいるわけだ。
「ジョン・マウス」や「フレディ・マウス」ではだめなのである。
「21世紀フォックス」というエンターテインメント会社がニューズコーポレーションからウォルト・ディズニーに売却された際、話が二転三転した。
売り手のニューズコーポレーションのトップは「ルパート・マードック」という海千山千のメディア王、買い手のウォルト・ディズニーのトップは同社の大規模拡大を成功させた「ボブ・アイガー」で、二人ともよくメディアに登場していたので、写真を見れば一目でわかる実業家だ。二人がこのM&Aで互いにばかしあいをしていたわけだ。
この「21世紀フォックス」の売却話に何回目かのひとひねりがあった時にウォールストリート・ジャーナルに並べて載った二人の写真につけられていたのが、マードック氏は「狐(Fox)」、アイガー氏は「ねずみ(Mouse)」で、二人合わせて「Fox and Mouse(狐とねずみ)」だった。
こういうのは説明を聞いていたのではだめで、見た瞬間に分からなくてはいけない。
しかしこれもダジャレって呼ぶのだろうか。「韻」よりかなり高等だ。
私にとって懐かしのダジャレは「Dollarosa」だ。ウォールストリート・ジャーナルの短かめの記事の見出しに出てきた。まだダジャレに真剣に取り組んでいた頃だ。辞書でもインターネットでもこの単語がヒットしない。
当時通っていたベルリッツの先生に聞いたら、一目でこれは「Dolorosa (通常は Via Dolorosa として使う)」からのダジャレだと教えてくれた。
「Via Dolorosa」というのは、イエス・キリストが自分がはりつけにされる十字架を背負って引っ立てられて歩いた苦難の通りの名称でエルサレムにあるのだという。
確かにこの記事は「ドル(Dollar)は下落したが、今後もさらにドル安傾向は進む(ドルの苦難は続く)だろう」という見通しを書いたものだった。
世界的な新聞にこんなキリスト教の話をダジャレで書かれても困るんだと言ったら、これは英語圏に住んでいれば異教徒でもいつの間にか知っている単語だそうだ。
私はこんな教養まで身につけようとしてももう無理な年だったので、ダジャレを追求するのはやめることにしたのだった。
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