オフィスの将来像の議論が盛んで、主な論点は「在宅勤務の有効性と弊害」「郊外部・遠隔地へのオフィス分散」「社会的距離とシフト勤務制」「オープンオフィスの功罪」等だ。まだ結論を出すのは難しく、小刻みな選択を積み重ねる事になりそうだ。大手ではフェイスブックCEOが大胆な在宅勤務計画を述べているが、先見的という見方と短慮だという見方がある。
ソフトバンクの孫CEOが巨額赤字が将来は黒字化する可能性を述べる際に自身を「イエス・キリスト」「ビートルズ」を引き合いに出した為、呆れられる以上に馬鹿にされている。同氏はビジョンファンドについて主要な部下さえも全く掌握していないともされている。孫CEOが実権を取り戻さないと、ビジョンファンドは底なしの泥沼に陥る可能性がある。
WeWorkは賃料引き下げ交渉に励んでいるが、破綻する運命は避けようがない。延命の時間稼ぎをしている目的は不明だ。ソフトバンクは同社の評価額を一時470億$(5.08兆円)としていたが、今回の決算では評価額を29億$(3130億円)と16分の1に引き下げた。
ホテルの立ち上がりが注目されている。アメリカのホテルの多くはホテル用不動産の所有等とホテル会社本体は分離していて、前者が建設資金を「商業不動産ローン」として調達する。これらを束にして証券化されたものがCMBSだが、これに支払い遅延が出ている。
ニューヨーカーが新型肺炎を恐れて脱出した先は別荘地のハンプトンズと郊外の住宅だ。前者では奪い合いが発生した。後者はとりあえず「賃借」した後に気に入って買う人間も多い。都心居住で手狭なマンションにいた人が、戸建ての広さや裏庭や周辺環境に喜んでいる。
超高級百貨店のニーマン・マーカス(ハドソンヤードに出店)と、モールへの出店数が非常に多い中級百貨店のJCペニーが破産申請した。実店舗型の小売業界は好・不調が二分状態だ。好調なのはロックダウン中もグロサリーが伸びたウォルマートやターゲットで、家電量販店のベストバイは顧客重視の姿勢から健闘している。
変わった業態を見てみよう。「光ファイバー・リート」は在宅勤務で需要が伸びて好評だ。大学の周囲にある「学生寮」は一部の大学の授業のオンライン化で思わぬ苦戦を強いられている。「シニアハウジング(老人ホーム)」では新型肺炎による死者が増加、問題となっている。
先行して新型肺炎に襲われた中国がロックダウンを解除し経済がどのように復活するかを世界中が注目しているが、4月分を集計すると予想よりも悪かった。改めて「ロックダウンはそれをかけるよりも解除する事の方が難しい」との認識が広がっている。
イギリスは3月27日のロックダウン以降、住宅売買手続きは中途で停止された状態が続いている。各種の業者が絡むので、停止の解除がどの程度スムーズに進むかが懸念されている。再開後、ロンドンの住宅価格は5%程度下落すると見られている。
パリのシャンゼリゼの高級店には中国勢が全く来ないので、仕方がないのでパリっ子向けに低価格の財布、帽子、Tシャツを売っている。
サウジは100億$(1.09兆円)を海外から調達しようとしている一方で、新型肺炎で株価が下がったアメリカの大手企業の株を大量に買っている。
***ジャパン・トランスナショナル 坪田 清***
http://www.japan-transnational.com/