アメリカのMBS市場が混乱、一部の大型不動産売買が流れた

〇アメリカのモーゲージ関連の金融市場で混乱が起きている。給料をもらえない人間がモーゲージを払えなくなる為、不安からMBS(モーゲージ証券)の価格が下落、これで発生した追加証拠金にモーゲージリートやモーゲージ投資ファンドが対応できない。裏付けられた物件がモールが主であるCMBS(商業不動産モーゲージ証券)でも混乱が起きている。

 

〇安邦保険が韓国のミラエ・アセットへ58億$(6260億円)で売却合意していたアメリカのラグジュアリーホテルのポートフォリオのディールは、ゴールドマン・サックスがCMBSによる資金調達に失敗、売買は流れた。投資家は新型肺炎で旅行者が減る事を懸念した。

 

〇WeWorkは新型肺炎が致命傷となる。毎日の利用者が激減し、払い戻しと解約要求が増えている。同社の負債はビルのリース料とテナントの前受け賃料が中心と思われる。同社はニューヨークとロンドンで民間最大のテナントであり、破綻するとビル市場に影響が出る。

 

〇ソフトバンクに関する記事の多さは異常だ。過去ではシアーズ、トイザラス、フォーエバー21のように倒産寸前の会社で、報道量が激増した。依然として深刻さが不明なのはビジョンファンドで、デリバティブを多用した為にリスクの総体が分からなくなっている可能性がある。この場合、「50億円の出資で5000億円の損失」というような事態もありうる。

 

〇アメリカの住宅市場は発表されている2月分までは好調なのだが、これから崩落する。オープンハウスは濃厚接触が懸念されて閑散、役所の登記事務所が閉鎖されているため不動産の売買手続きが進まない。オンラインでは代替できず人力でしか行えない業務は多い。

 

〇ホテルは新型肺炎からの影響を最も大きく受けている。旅行客が激減し、各種のコンフェランスやコンベンションが中止になり、マリオット他で大量の一時帰休が発生している。ニューヨークはただでさえ新規開業が相次ぐ状態が長期間続き、供給過剰だった。

 

〇Airbnbは今年暮れのIPO・新規上場を予定していたが、利用者の急減で難しそうだ。

 

〇モールは来館者減で苦しんでいる上、金融上の問題も生じている。特にイギリスのSC保有大手のインツは資金調達の失敗の為、アメリカのモール会社群よりも一足先に経営破綻が確実になった。

 

〇ブラックストーンがSOHO中国を40億$(4320億円)で取得する。SOHO中国は上海と北京に著名な大型ビルを保有、ブラックストーンは割安な買い物をしたと評価されている。」

 

〇先日ロンドンで8億£(1060億円)超と思われる超高級ホテル、ザ・リッツが売りに出たが、今度はメイフェアの高級ホテル、ウエストバリーが13億$(1400億円)で売りに出た。

 

 

***ジャパン・トランスナショナル 坪田 清***

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