ソフトバンクによる約1兆円の救済パッケージの一部の「WeWorkの既存株主から株を30億$(3300億円)で買い取る」という部分について、孫氏はこれをしないと言い出した。
WeWorkが証券取引委員会や司法省ほかから利益相反、自己取引、開示違反を追及されているからだそうだが、これは日本語でいう「いんねん」だろう。「いんねんをつけて断ろうとしている」という話だ。
ソフトバンクの孫CEOはニューマン氏が麻薬の常用者であることを当初の段階から十分知りつつ、最終的に総額約2兆円弱のコミットをしている。今回問題になっている「利益相反、自己取引、開示違反」等は昨年8月の時点で誰もが知りえた話で、1兆円の救済パッケージがディールになったのはその後だ。
30億$(3300億円)分のWeWork株取得ではじめてソフトバンクの支配比率は29%から80%になり、WeWorkの経営権取得となる。これをしないなら、ソフトバンクの持ち株比率は29%に戻って経営権を失い、支配株主はニューマン氏に戻ることになる。
たぶん、孫氏は同社の再建をあきらめて既投資分はドブに捨ててもよいと決めたのだろう。
WeWorkがはしにも棒にもひっかからない会社であることは何回も書いてきた。そこへ新型肺炎の直撃だ。いまコワーキングに契約する人間なんているわけないし、既存会員の退会も増えているはずだ。
年内の支払い家賃は22億$(2400億円)、買収済みの子会社数社を赤字で叩き売って資金を作ったがもう続きません、何月にはアウトですとの報告が孫氏の下に届いていたのだろう。
「ソフトバンクの孫氏の運が尽きた」と書いた新聞もあった。
ソフトバンクの株価が急落した時、孫氏はただちに自社株買い5000億円を発表した。株価が下落したらすぐに自社株買いというのは孫氏の得意技だ(今回はエリオットの問題もある)。しかし株価は反発せずさらに下落した。資金の外部流出を問題視しS&Pはアウトルックをネガティブに落とした。BB+というジャンク格はさらに落とされる。日本には至るところに「ソフトバンク」の店があるおかげで、日本人の間でだけソフトバンクの信用は高い。
冒頭の30億$(3300億円)の株の買取をやめるという話で、ソフトバンクの株価はさらに下落した。
孫氏は今度はビジョンファンドで新たに100億$(1.1兆円)調達し、ポートフォリオ88社の中の会社に追加投資したいとしている。半分は自社で出し、残りの半分は外部の投資家(いるのだろうか?)から調達するのだそうだ。
おりからビジョンファンドの投資先の一社で低軌道衛星通信会社のワンウエブの倒産申請話が表面化した。ビジョンファンド出資先の倒産第1号となるかもしれない。同社のライバルはテスラ系とアマゾン系だ。ソフトバンクはアリババ一社の含みで世界中と戦おうとしている。
先日はソフトバンクからの打診3000億円について、邦銀メガ・バンク3行はもう融資上限なので貸せさないと断ったという。そんなはずはない。銀行はいろんなポケットを持っているからだ。もうこれ以上は勘弁してくれというだけの話だったのだろう