MIPIM(国際不動産見本市)というのは毎年カンヌで開かれる世界的規模の不動産関係者の大会だ。今年は3月10-13日の日程で予定されていたが、新型肺炎問題で6月以降へと延期にすると発表された。
26カ国から77プロジェクトが展示され、(主催者発表であり疑わしいが)2.3万人が集まる見込みだった。カンヌへの出張だというので、日本の学者やお役人さんたちへの評判も良かった。
これら77プロジェクトへの投資家を募ったり、いろいろな情報交換することをしたり、中には「ロシアの金持ちがリビエラでこんな別荘をほしがっているのだが、ないか?」みたいな話も交わされると聞く。
私がサラリーマンのころは同じ部の隣の課がこれを担当、ごくまじめな大会だと思いこんでいたのだが、2年前に突然、以下のような記事が出た。
一つ目はフィナンシャルタイムズ(アジア版)2018年1月27日号の記事の中での流れ弾だ。ロンドンには男性だけに招待状がいく「社長クラブ」というのがあるそうで、このディナーパーティに記者が潜入したところ性的不品行がはなはだしい(確か「ウエイトレスがバニーガール姿だった」ことをはじめ、もろもろ)という話で、末尾に「MIPIMにも似たような雰囲気がある」と突然出てきた。
二つ目は前の記事の直後に出たBBC(日本時間)2018年2月28日配信の記事で、こちらはMIPIMだけを取り上げ、同見本市では「性的嫌がらせ、酔っ払いの不品行、女性蔑視、性差別」が横行し、「ヨーロッパの各地から売春婦が集まりツイッターにMIPIMとハッシュタグをつけて集客している女性もいる」としていた。
私はこういう話は聞いたことがないので、非常に意外な内容だったわけだ。
もともと日本の不動産業界が近しかったのは「世界不動産連盟」という団体だった。アメリカで最強の不動産の業界団体は「全米リアルター協会(NAR)」なのだが、これは不動産仲介業者の団体だ。BOMAというオフィス・ビルに特化した業界団体もあったのだがビルの賃貸行為と管理が中心でここも違った。日本の不動産業界の最大勢力は「総合不動産会社」なわけだったが、このような業態は当時はアメリカにはなく、各種機能に専門分化していたわけだ。
後年、アメリカでまじめな団体を探すと「××インスティチュート」という団体が推薦されこことは少々付き合ったのだが、なにせ「研究所」なのでまじめすぎてこちらが付いていけない。
「世界不動産連盟」は毎年一回、世界の各地でその国の会社が持ち回りで「世界大会」を開き、「世界会長」という役職もある。「世界不動産連盟・世界会長」なんて、すごい肩書きになるわけだ。
ここの東京大会が開かれた時にちょうどうまい口実があり、私は会社を抜け出して3日間くらい入り浸った。ビバリーヒルズで不動産仲介業を営んでいるおばさん(おばあさん)と仲良くなって二日にわたりいろんな話をした。
東京大会では日本の不動産大手がタッグを組んで「税制の国際比較」とか「日本の不動産市場」みたいなまじめなセッションをいっぱい用意し、ホテルの手配からオプショナルツアーとして富士山や東京名所めぐり、さらにはガラパーティと盛りだくさんの企画となっていた。
よその国では大会の開催を取り仕切る胴元の会社が小銭をもうけようというこんたんで引き受ける(最低1000万円くらいのもうけにはなる)ので、お金にならないからセッションの数は少ないという。日本では業界の各社ともこの大会で儲けようなんて発想は思いもつかず、赤字額見込み額を各社にどう割り振るかが問題になる。
ビバリーヒルズのおばさんから聞いてわかったのは、彼女の主目的は「日本旅行」であり、「世界不動産連盟の大会ではいろいろ資料がもらえ、旅行について税務署へ出すエビデンスになるのでありがたい」と言っていた。
そのうち「世界不動産連盟」から乗り換えた先が「MIPIM」だと理解しているのだが、直接の担当をしたわけではないのでこのあたりの経緯は本当のところはどうなのか知らない。
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