アメリカ人はいつの時点で選挙の開票作業を続けるモチベーションを失うのか

 アイオワの民主党の党員集会の開票がうまく進まなかったが、この手の話の中で過去で最も派手だったのは2000年のゴア対子ブッシュだ。この話は後にしよう。

 大体、アメリカの大統領選挙制度というのは意味がなく複雑、かつ雑で、これではイカンと思っている人が多いのだが、欠陥が露呈したのが、2000年のゴア対子ブッシュだ。

 

 今回のアイオワでの集計がうまく行かなかったのは、1700ヶ所で行われた党員集会の集計用アプリの不具合だったという。もともとアプリの出来が悪かったようで、修正を何度か重ねて最終バージョンとしたのが実際に使う日の2、3日前だった。これにもまだバグがあったわけだ。

 ちなみにこのアプリの開発費、僅か6.3万$(690万円)だ。こんな値段で大統領を選んでいいのか?

 

 一般に選挙は、投票→開票速報(数次)→当選確定→確定投票数(全投票を勘定し終える)となり、これに民間がやる「事前調査」「出口調査」「当選確実の発表」が挟まる。 

 アイオワは「選挙」ではなく「党員集会」なので流れが違うが、それはおいておこう。

 

 日本では「当選が確定」しても、票を勘定している人たちはそのまままじめに全部勘定するようだ。

 アメリカではどうも「当選確実」が出たあたりで、票を勘定するモチベーションがぐぐっと下がり、「当選確定」以降はもう勘定する意味がないという気分になるようだ。

 

 またアメリカでは選挙人登録をしないと投票が出来ない。ところが有権者の数より選挙人登録数の方が多い州があり、選挙人の氏名に日本で言えば「ポチ」とか「タマ」みたいなのが異常に多い州がある。入り口の段階でもうおかしい。

 

 はしょって2000年大統領選のドタバタの話に飛ぼう。

 日本でもそうだが、アメリカでもメディアが「当選確実」とすればもう決まったという感じになる。この「当選確実」は何に基づいて判断するかといえば、公式な開票速報もあるが、「出口調査」が最も重視される。 

 「出口調査」には非常に金がかかるので、2000年の大統領選ではメディア各社がお金を出し合って一つ会社に調査させ、そのデータをシェアして各社が「当選確実」を判断した。

 ここで2つの間違いが重なった。一つはこの調査会社が一部で見積もり計算を間違え、メディアは同社の数字をそのまま信じ、「ゴア当選(当選確実ではない)」としたことだ。もう一つは大票田のフロリダで「ゴア勝利」と報じられた後に票の勘定間違いが判明、実際は「ブッシュ勝利」となった。

 全国を集計すると「ゴア勝利」は「ブッシュ勝利」にひっくり返ってしまった。

 

 ここから先はもう泥試合だ。

 例えば貧困者が多い地区では無効票が多かったのだが、これは票を勘定する機械の新品を買う金がなく中古を使っていた為に判読能力が低かったためで、さらに貧困層は民主党支持が多いのでちゃんと勘定できていればフロリダではゴアが勝っていた? 投票用紙の氏名記載順がブッシュに有利だった? 投票に行ったら投票所が移動していて投票場所が分からなかった? ・・・

 

 選挙のようなものは下手に工夫やIT化せず、ローテクなのが一番いいのだろう。日本の選挙事務は世界に確実さ・再現可能さと開票作業者のきまじめさを誇れるようだ。

 

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