オンライン通販が洗練されていないので日本では百貨店の落ち込みが小さい?

 オンライン通販の「仮想店舗」に対して、物理的に存在する店舗(英語では『レンガとモルタル』という)をここでは「実店舗」と呼ぶ。小さな商店からスーパー、百貨店、モールなど様々な形態を含む。

 

 オンライン通販に実店舗が押され気味なのは世界共通だ。しかし日本の場合は悪いとはいえ、これでもアメリカやイギリスに比べて退潮の速度はかなり遅い。

 

 アメリカの実店舗の苦境を見てみよう。

 アメリカで最も苦戦している実店舗の業態は「デパート」だ。シアーズは倒産、優良店だけを切りだして営業を続けているのだが、これもまた不振に陥っている。メイシーズは毎年、大幅な店舗の閉鎖と人員削減を発表するのが恒例となった。ニューヨークのど真ん中ではロード&テイラーが閉店、バーニーズ・ニューヨークは倒産してブランド品としては稀である値引き・精算セールを実施した。地方百貨店は閉鎖の嵐だ。

 客が来ないので、モールも苦戦している。なんとかして来てもらおうとあの手この手を繰り出しているが、効果が上がっているモールは少ない。経営不振の店舗が家賃下げを強く要求、空室率もじりじりと上昇しているが、今の所、モール会社は家賃下げに応じていない。しかしどこまでもつかは疑わしい。アメリカは基本的に店舗面積が多すぎるのだ。

 モールや百貨店に客が来ない最大の要因はオンライン通販に食われているためだ。ウォルマートやターゲットのように実店舗のネットワークの強みとオンラインを組み合わせて成功している会社もあるが、例外である。

 

 イギリスの「ハイストリート」とは日本でいう「商店街・繁華街」に近いが、広く取るとキリがないので大き目の500本について定期的に観察がされている。イギリスで最も苦境にある実店舗ビジネスは、このハイストリートにある商店だ。空き店舗の割合は10.3%、昨年は上半期だけで約3000店が店じまいした。

 デパートでは日本でも有名なマークス&スペンサーの経営悪化が続き時価総額が4年前の半分以下に下落、もう「大企業」ではなくなった。中堅デパートのデベナムズは破綻、同じく中堅のビールズも危なくなっている。

 

 日本のデパート等の実店舗は悪化していると言われているが、アメリカやイギリスに比べると、まだはるかにマシなのだ。地方では苦境の百貨店が多いが、東京ではちゃんと店が開き店員がいて商品が棚にある。

 

 なぜ日本では実店舗がオンライン通販にあまり食われていないのか、私の独断と偏見を述べよう。

 

 それはたぶんオンライン通販の各サイトが、日本ではまだ使いにくいからだ。

 

 まず「楽天」。私は楽天カードでポイントが自動的にたまるので、年に一回か二回、ここで買い物をする。店舗ごとに手続等がちょっとずつ違うせいか、すごくいらつく。毎回同じ店でビールを買うことにして、このいらいらを最小にしている。

 次に「ヤフー・ショッピング」。親会社のソフトバンクは自分たちに都合の良いシステムを構築し客に押し付けて平然としていばっている癖がある。こんなスピリットの会社のサイトにはそもそも近づくわけがない。いくらポイントをばら撒こうが私には無駄だ。

 「大手町モール」「産経ショッピング」、ここはシニアの男性の心をつかむ商品が多く何回か買い物をしているのだが、そのたびに二度とこんなサイトで買うものかという気になる。しかしスタッフの方々が実にアナログでほっとする所があり、こういうニッチな路線もありかなという気もする。

 その他、個別店のサイトでも、満足がいく出来のサイトはない。これは私の性格がいけないのだろうか?

 反面、お金のやり取りが絡まない、一休とか食べログには問題を感じない。

 

 こうしてみると、やはりアマゾンの使いやすさはピカ一だ。私はアマゾンの利用がダントツに多い。アマゾンと他のサイトとは雲泥の差があり、流れるように手続きが終わる。使い慣れているのでますます使いやすくなっている。Eコマースの世界ではほんの僅かな差が後には非常な大きな差になるものなのだろう。

 

 という訳で、日本のオンライン通販サイトはアメリカやイギリスより洗練されておらず使いにくい(面倒くさい)ことが幸いして、デパート等の実店舗にまだ客がとどまっているというのが、私の意見だ。

 

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