当方、「新聞」をまともに論評できるほどの者ではないが、日経電子版にのる中沢克二記者の中国関係の記事は、世界最高水準だと思う。
政治力学が具体的な人名を挙げて実に上手に解説され、毎回、感心している。
難を言えば、もう少し経済の話も解説してもらいたい物だが、たぶん中沢氏は「政治」の担当で、経済の話は別の部署になるのだろう。
中国の政治絡みの話を英語のメディアで読むのは、大変なのだ。当方、地名は何とかなるのだが、人名の英語表記がなかなか覚えられない。たぶん毛沢東から始まって10人くらいしか英語表記を覚えていない。これでは英語で書かれた中国の政治絡みの話はとても読み解けない。
それでも何とか読まなくてはいけない時があるわけだが、その点を割り引いても中沢氏の記事は世界最高水準(ウォールストリートジャーナル、フィナンシャルタイムズ、ニューヨークタイムズ比較)だと思う。
私は日本の新聞では海外関連の記事は「私にとって重要でない話」は読むが、「私にとって重要な話」は読まない。読んでしまうとあとで英字新聞の記事を読む時にかえって手間がかかるのだ。日本の新聞では出来事の「解釈」が世界標準と違っていることが多いからだ。
英語のメディアでは読者が持っている常識なり前提をあらかじめ想定して記事が書かれている。それが顕著なのが「記事の見出し」と「本文の出だしの2,3行」「写真やグラフ」で、日本の新聞記事を読んでしまうとこの入り口の非常に重要な部分がすーっと入ってこなくなってしまう。
よく起こる現象なので、あとで英語のメディアで読む話は日本の新聞は読まないことにしているわけだ。
これは日本の新聞への悪口ではない。記者だったら私だってたまらないだろうという話を二つ書く。いずれもかなり昔の話だが有名な逸話だ。
エリザベス女王が1993年の年頭のスピーチで、前年を振り返り「アナス・ホリビリスだった」と言った。これは「annus horribilis」と綴るラテン語で、「ひどい年」という意味だ。王室でいろいろなごたごたがあった事を振り返って言ったわけだが、紙で書かれていればともかく、スピーチで言われたのではラテン語なんてわかるわけがない。おまけにこの語句はこのスピーチでのキーワードの一つだった。しかしここまで教養を求められたのでは、記者としてもたまったものではない。
アメリカの連邦準備制度理事会(Fed、FRB)議長だったアラン・グリーンスパン氏はただですら滑舌が悪く発音が聞き取りにくい上に、突然難しい言葉を言い出すので、これも記者泣かせだった。一番有名なのは「irrational exuberance」でこれは1996年の市場の過熱(バブル)を指した語だ。「exuberance」なんて難しすぎる単語をグリーンスパン氏がもごもごと言ったので、これも聞き取れた人間はかなり少なかったようだ。
「exuberance」は辞書で引くと「横溢、繁茂」という訳になっている。その後、「Irrational Exuberance」はそのまま本の題名となって、邦訳では「根拠なき熱狂」との題名が付けられた。確かに「非合理な繁茂」では本は売れないです。
なおこの「exuberance」、今はメディアでも時々見かけるのだが、それはこの一件でこの単語が有名になったからだ。
こういう世界で日本の新聞記者・特派員の方々は戦っているのだから、大変だと思う。
当方、ケチは付けるがみなさんの日ごろの活動を人一倍、尊敬しているので頑張ってください。
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