WeWork問題セミナー(2019年末版)

雑記 

 

 「WeWork問題の暫定報告2019年版」というセミナーで講師をしてきた。

 いつもながら不動産業界も変わったものだと思うのだが、みなさん非常に熱心に聞いてくださる。

 私がサラリーマンだった時はセミナーなり講演会の半分では寝ていたし、不動産業界の人間ってだいたいそんなものだった。

 

 今日の話でまず強調したのはニューマン元CEOはイスラエルの「キブツ」で育ったということ。キブツとはヨーロッパでの迫害から逃れたユダヤ人が、パレスチナ人たちが住む地に逃れて身を寄せ合って生きるために作った、共産的社会農業集団だ。

 彼がWeWorkで売り文句にした「コミュニティ」というのはたぶん「キブツ」育ちであることに根差している。この文句がフリーランサーやスタートアップを捉えたのだろう。

 

 話をぐわっと飛ばそう。

 

 たまたま今朝のテレ東の早朝の経済ニュースでなぜか一週間か10日前くらいに英字紙で見たWeWorkに関するグラフが使われていた。

 一目で「これはもうだめだ」と分かるグラフである。

 ニューヨークとロンドンでのWeWorkのこの一年間の新規リーシングを四半期ごとに棒グラフにしたものだ。

 

 去年の8月中旬のIPO申請で上場目論見書が公開されてすさまじいバッシングの嵐となり、いくら公開価格を引き下げても買いが集まらず、IPOを断念したのが9月中旬だ。

 そして問題のグラフで「10-12月期」のリーシング面積はめのこでそれまでの8分の1。一方、新規拠点のオープンのピークは去年の12月くらいだろうと思う。

 

 同社が置かれている状況からして、「10-12月がほぼゼロに等しい」というのは致命的なのだ。家賃支払いや人件費で金が出る一方で、ニューマネーはない。

 ソフトバンクがさらに金を出す可能性はない。みずほ、三菱UFJ、三井住友は個別会社への上限があるので、ソフトバンクにはもうこれ以上、融資できないとしている。同社と銀行の蜜月は終わっている。ソフトバンク得意のジャンク債も今は難しいと思う。

 

 ステージとしては次の段階にはいっている。

 ソフトバンクの問題として「WeWorkをどのように破綻処理するか」

 ビル会社の問題として、「オフィス市場で影響をいかに小さくするか」

 

 なお日本のWeWorkだが、世界に2つしかない黒字国の一つだそうだ。にわかに信じがたい話で親会社WeWorkと同様、いい加減な決算をしている可能性はあるが、それでもWeWorkジャパンはソフトバンクとの合弁会社なので、この程度ならソフトバンクならどうにでもなるだろう。

 ただアメリカのWeWorkが破綻する時に、「WeWorkブランド」は負の遺産になる。

 

「WeWork」というブランドはあらかじめ名称変更しておいた方が傷が小さいと思う。

 

 

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