サウジでの未来投資会議(砂漠のダボス会議)の後、ソフトバンクの孫CEOはムハンマド皇太子と紅海でシュノーケルを楽しんだという。
なんと危ない事をと思わざるを得ない。
今回は二隻の大型ヨットで行ったらしいので、たぶん「警告」レベルだろう。
つまり、その気になれば「私は君を紅海のまん中に置き去りにできるんだぞ」とか、「心臓マヒで溺死したことにもできるんだぞ」とか、要するにこの状況に持ち込めば君をどうする事でもできるのだと孫CEOに気付いてもらえば、良かったわけだ。
ムハンマド皇太子からのメッセージは簡単だ。ウーバーとかWeWorkとかいろいろあるようだが、サウジがビジョンファンドに出した450億$(4.9兆円)について、アリババ株や携帯のソフトバンク株を売ってでも約定はしっかりと守れよという話だろう。
先の砂漠のダボス会議で、孫氏のスピーチを誰も聞きに来ず、恥をかいたのは自分の責任、ファンドでの約定が守れないようならまた一緒にシュノーケルに行こうよというわけだ。
ビジョンファンドへの出資には7%のクーポンが付いている。ファンド手数料を1%とすると実質6%だ。5年を複利で回すと利子は33%、1.6兆円になる。
もし今、キャッシュで払っているとしたなら、タコ配だ。
ムハンマド皇太子は親交?はともかく、お金の面では孫CEOを信頼していない。今年1月に孫氏が行おうとしたWeWorkへの追加出資160億$(1.7兆円)にはストップをかけた。
原油が発見される前、湾岸諸国の主要産業は真珠採りだった。真珠採りにかかわる職能が部族ごとに分かれ、その中に「もめ事を仲裁する職能」を担う部族があった。簡単に言えば、武闘派である。
この武闘派の部族がサウジを含めた周辺各国の王族や首長族となった。クエートだけは例外で商いを職能とする部族がトップとなったため、同国は周辺諸国からなめられていた。イラクがクエートに侵攻したことがあったが、これはなめられていた事も原因の一つだとされている。
これを知れば、ジャーナリストのカショギ氏をトルコの領事館内で殺害することを命じたのも、知られているだけで10人を超す殺害がされたのも、それほど不思議ではない。国内で処分された人間の数は数えきれないという。
紅海のまん中でからかって溺れかけさせることくらいは、いたずらよりも軽い。孫氏は覚悟を決め、自分がいつ死んでも残された人が困ることがないような手立てをしておくべき社会的な立場なのだ。
少なくともWeWork問題にめどが付かないうちは、サウジの皇太子は孫氏にとって一緒にシュノーケルを楽しむべき相手ではないように思う。