たぶんイギリスのフィナンシャルタイムズを買収した影響なり、成果なのだろうと思うが、日本経済新聞の欧米の不動産関連の記事が随分とまともになってきた(アジアについては当方は論評できない)。
昔はひどかったという話は後回しにして、今回高く評価できるのは、アマゾンがニューヨークでの第二本社計画から撤退することを報じた同紙の記事だ。
さほど長くない記事の中に要領よく現地でのいきさつや論点がまとめられていて、私の評価ではこの記事は満点だ。
一方、例えば同じ日経系のワールドビジネスサテライトではコメンテーターがこの問題で頓珍漢なコメントをしていた。日経の記事の方はこれとは大違いなできばえなのだ。
「日経の海外不動産関連記事は昔はひどかった」という例をあげてみよう。
月次で発表されるアメリカの住宅市場のある指標が数年続いた上昇局面から横ばいに入り、そして下落となった時があった。
私が読んでいた英字メディア数紙はすべてかなり大きな扱いでこれを「アメリカで住宅市場が下落」とした。
ところが日経だけは「アメリカの住宅市場、上昇が続く」という見出しを付けた。
どういうことかというと、どんな指標でも「ある程度の期間続いた上昇局面が横ばいに入り、そして下落し始めた」という時、「前月比で見れば下落」なのだか、「前年同月比でみると上昇が続いている」状態にあることがある。
これはグラフを書いて、一年ずらしたものを重ねれば了解いただけるだろう。
この時、世界中のメディアの間で「アメリカの住宅市場が下落に入った」というコンセンサスが持たれた中、日経だけは「住宅市場の上昇が続く」という認識をしたわけだ。
日経を擁護するなら、「前月比」の場合は暫定値での比較になり精度において劣るという問題がある。これは確かに正しい。
しかしこの時はアメリカの住宅市場(これは景気の重要な先行指標だ)を世界中が非常に高く注目していた。タイムリーさを犠牲にして「前年同月比較」により数字的に正確な変動の方を報じるというようなのんきな新聞は日経しかなかったわけだ。
当時、私は日経テレコムのヘビーユーザーだったのだが、この一件以降、日経テレコムの新聞記事見出し検索は注意して利用することにしたのだった。