宅地建物取引士の更新の法定講習の感想

 この資格は(昔は)不動産業従事者必携で、持っていない業者さんは不思議がられたものだが、昨今は合格率が僅か15%だという。これではプラチナ資格化してしまう。

 私が勤めていた会社の昔の合格率は90~95%で、落ちるといつまでも「あいつは落ちた」「あいつも落ちた」と飲み会の席での酒の肴になるハメになったものだった。

 

 今回の講習会場には「スマホ等をいじっている人、居眠りした人は後日補講」と大書されていた。10時から5時までうかつにトイレにいけるのかどうなのか分からない、一種の軟禁状態におかれる。

 5年に一度のこの法定講習は「修行」の場でもあるのだ。

 

 感想を3点述べたい。

 

 まず第1点として、宅建業を取り巻く法律の数がとんでもなく増えた。

 大どころで上げられるのは、金商法、民泊法、マン管、マン建て等なのだろうがそれ以外にも多数あり、法律の絶対数が「激増」している。宅地建物取引士を所管する国交省不動産業課の人間だって、局部的な話以外は知らないだろう。

 ちなみに私が受験した頃の建設省不動産業課の悩みの一つは、宅建の受験者の中に試験監督をアルバイトでしている女子高校生のお尻を試験中に触るやからがいることだと、不動産業課の隣の課の役人から聞いた。そういう感じのところもある試験だった。

 

 第2点としては、民法の設例がやたらに込み入っている。

 昔はさあっと読めば揉め事の状況はなんとなく分かったものなのだが、今回の講習で使われた設例は腰を入れて読んでも理解できない。これでは回答を4択の選択肢から選ぶ以前の問題だ。

 昔に比べて、世の中が込み入ってしまい、紛争も複雑になったのだろうか。

 

 第3点としては、税法も一段と複雑になった。

 単純に言えば「特例」や「部分改正」が増え、かつ複雑化している。

 もっともそうなるのは不動産業界からの税制改正の要望の反映でもあり、業界としては感謝すべきスジの話だ。しかし、試験を受ける身としてはたまったものではないだろう。

 

 それにしても一緒に講習を受けている人たちはいかにも頭が良さそうな方が多くいた。

 先生の説明を熱心に聞き、うなずきながらメモまで取っている。

 

 不動産業界の社会的な地位も昔に比べて格段に上がった。三井不動産に至っては、江戸英雄氏、坪井東氏、田中順一郎氏、岩沙弘道氏と社長が4代続けて勲一等(または旭日大綬章)を授与されている上、岩沙現会長は経団連の評議委員会議長まで勤められているのである。

 

 不動産業界はそういう世の中になったわけだ。