コワーキングの雄であるWeWorkに対して、前向きな評価とケチが交錯している。
前向きな見方としてはソフトバンクからの44億$(4800億円)を始め、投資家から高く評価されている点が最大だ。資金を例えば「ミートアップ(趣味のサークルの世話をする会社)」の買収に用い、共有オフィスを昼はビジネス、夜は趣味の会と二毛作しようとしていること等も評価されている。また既存のビル大手も、同社とのタイアップに前向きになってきた。
しかしながら同社のビジネスモデルの根本的な部分への疑問も指摘されている。同社はアメリカでは「IT新興企業」の一社と理解され、同社も意図的にか自分自身も騙されてか、「IT新興企業のフリ」をしている。しかし実態は昔からある不動産ビジネスの亜種にすぎず、成功の秘密は「コワーキング」と言うよりも「ブランディング」にあるという指摘である。
中国の新興巨大コングロマリットであるHNA(海航集団)と大連万達が大揺れである。
昨年、明文化された当局からの海外投資への締め付けの中、HNAはシドニーや、カナリーウォーフのビル2棟の売却/売却の検討をしている。同社の財務状態はかなり悲惨で、グループ内の上場会社は株式売買停止をするところが続出(1/24現在で7社)、株価は急落、債券利回りは高騰、債券やローンの約定返済ができない例も出ている。同社はニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ他所在の物件、40億$(4360億円)相当を売りに出した。
大連万達も当局から海外債務の削減=海外資産の処分を迫られ、ナインエルム(ロンドン)、シドニー、ゴールドコーストの物件の売却を決め、残っているのはシカゴとビバリーヒルズの物件だけになった。大連万達は国内に「人民元」を大量に保有しており、当局から外貨取得の許可さえ下りれば一気にドル建て債務を返済できるので問題はHNAほど深刻ではない。
安邦保険は問題勃発当初、HNAや大連万達よりも苦しいと言われていたが、取得当時から高すぎるとされたウォルドルフ・アストリア(超名門ホテル)を中国の当局者が一緒になって買い手を探しているとされる。自社単独では手に負えないということかと思われる。
ウォールマートが楽天と組んで、日本のオンライン・グロサリーに乗り出す件については概ね前向きな論調が多い。しかしながら「楽天コボ」については、アメリカではかなり後発でなり、また電子書籍市場の売上高はもう縮小しているという指摘もされている。
ちなみにアメリカで、アマゾンに正面から対抗しようとしている実店舗会社の中で、最も腰が入っているのはウォールマートだ。全米一の店舗網(=物流倉庫網)の強みやオンライン通販大手を買収して自社に取り込むなどし、オンライン分野でも果実が実りつつある。
カジノのウィン・リゾーツのスティーブ・ウィン氏を襲っている最大のスキャンダルは「性的不品行」と呼ぶよりも「性犯罪」と言うべき事案だ。カジノのライセンスの要件として「犯罪者ではない」「組織犯罪に関係していない」等があり、ウィン氏が「犯罪者」であるとされると、マサチューセッツ州ボストンで建築中の大型カジノが宙に浮いてしまいかねない。
香港での土地の供給は香港政庁による「公売」が中心なのだが、中国勢による落札がめっきり減っている。主因は中国当局による資本規制と海外投資への取り締まり強化だ。中国勢による購入比率は1-3年前の50%から、昨年4月以降では11%に落ちた。
なお香港では一部に、やっと高値警戒感が出ている。香港の不動産価格上昇をけん引してきたのは中国マネーである事からも、「警戒感」は妥当であろう。
アメリカのファンド、ブラックストーンがまたもや早業を見せた。2013年から買い始めたリスボン(ポルトガル)の4本のSCを売却した。うち1本は買値の倍で売っている。
グローバル不動産経済研究会:レジメ (2/10)
(ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清 f-ree@88.netyou.jp)