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ウォルドルフ・アストリアはニューヨークのミッドタウンでヒルトンホテルが運営している超高級・超名門のホテルだ。
元々はヒルトンはこのホテルの不動産も所有、いわゆる「自社物件」だった。
中国の安邦保険がこのホテルの「不動産」を購入したのは、2015年2月とされているが、たぶんこれはディールのクロージングの日で、ディールの発表自体は2014年10月だ。
問題は「価格」だ。19.5億ドルと、アメリカのホテル史上では突出した最高額だった。
この取引の事を、「folly」と表現するメディアは多い。「folly」とは「愚行」の事だ。
この時に道連れにされるのが決まって、「バブルの時代の日本の会社のような・・・、例えば『三菱地所のロックフェラー』や、『ゴルフ場のベブルビーチ』のようなfolly」とくる。
これは三菱地所さんにとっては迷惑な話で、今でも20数年以上前の失敗が話のスパイスとして引き合いに出されてしまうわけだ。
三菱地所さんの名誉のために言えば、ロックフェラーとのディール、パッケージディールだった訳だが、おまけでついてきた不動産仲介会社が高値で売れたり、ビルもそこそこの値段で売却できたものがあったり、さらに無傷の超高層ビルが残っていたりして、当時、表面化した巨額の損は、今ではもうとっくに取り戻しているのではないかと思う。
さて安邦保険、ウォルドルフ・アストリアの営業を来年春から休止し、全1413室ある部屋のうち、1100室をラグジュアリーな分譲マンションにコンバージョンするらしい。
3年後の営業開始後、残りの300室程度は以前の通り、ヒルトンが運営する。
問題はその収支だ。
ニューヨークでは、歴史ある(≒古い)ホテルのマンションへのコンバージョンは、ベラボウに儲かるのだ。
安邦保険が19.5億ドルで購入した時、全部を分譲マンションにコンバージョンすれば、40億ドルになると言われた。今回もリノベ費用を差し引いても、十分おつりがくる。
スターウッドのM&Aやカナダのホテルのオファーの撤回で、何を考えているのかよく分からないところがあった安邦保険だが、本件は「folly」ではなく、しっかりとそろばんを弾いていたようだ。
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