平成3年か4年の事だ。私がお守りをしていた旭川市内の「山林」について買主が現れた。
前日に旭川のホテルに泊まり、当日は余裕を見て1時間、早めに出た。
降りた「東旭川駅」は衝撃的な駅だった。
「東旭川」というくらいなら、旭川市の市街地が続いている場所だと思い込んでいた。
しかし、旭川駅からほど近いその駅で、列車から降りたのは私一人。
改札口が見当たらず、どちらに向かって歩けばよいのかすら、わからない。
大体、ホームは形からして「ホーム」らしくなかった。「島」になっていないのだ。
列車が止まる側はちゃんと「壁」になっているのだが、反対側はごくなだらかな斜面だ。
そのまま駅の外の平らな空き地とつながり、レンゲに似た白い花が群生していた。
簡単に乗り越えられる、壊そうと思えば明らかに簡単に壊せる、頼りない「白い木の柵」が、かろうじて駅の「構内」を普通の土地を区別している。
私は呆然と立ちすくんだ。列車から降りたのに、とにかく歩く方向が分からないのだ。
そうこうしているうちに反対側に止まっていた列車が動き出した。
改札口が現れた。その列車に隠されて見えない状態だったのだった。
駅の外に出てまた呆然とした。
私は喫茶店で時間をつぶすつもりで、早めにホテルを出たのだった。
しかし駅前には、喫茶店どころか商店を含めて「家」が一軒もない。
緑の公衆電話ボックスが一つあるだけなのだった。
そこから買主に電話して、指定時間より早めに着くと了解を得た。
「秘境駅」がブームだというが、それはそこが「秘境駅」だと知って向かうものだと思う。
私の場合は不意打ちをくらったようなもので、東旭川駅は当時、十分、秘境駅だった。
少し離れたところに「東旭川」の集落(住宅地?)があるらしいことは今、知った。
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