日米の中古住宅の流通量を比較したい。
アメリカの中古住宅売買件数は、昨年暮れの時点で、年換算で約530万件強のペースである。日本の中古住宅流通件数は全数把握ではないかも知れないが年17万件(総務省「住宅・土地統計調査」2013年)程度なので、アメリカは日本のなんと31倍もある事になる。なおアメリカの人口は3.2億人で、日本の2.5倍だ。
近時、アメリカの中古住宅売買件数がピークだったのは2005年9月で、年換算すると726万件のペースだった。サブプライムショック、リーマンショックを経た後のボトムは2010年7月で同345万件とピーク時から半減、これが、約530万件まで回復したわけだ。
新築住宅着工の方はアメリカは年換算約117万戸のペース、日本は年88万戸(国土交通省「住宅着工統計」2014年)程度だ。
以上、これらの数字は日米ともブレが大きいので、比較した時の「倍率の程度」は時期によりかなり変動する。しかし「中古住宅流通」はアメリカの方が比較にならないほど多く、「新築住宅着工」では両国間の差はずっと小さいと言える。
住宅市場の活況さの度合いは景気をビビッドに反映するため、各種の住宅統計は非常に重要視されている。中でも最も重要視されているのは前出の「中古住宅の売買件数」だ。
この統計を発表しているのは不動産仲介業者の全国団体、「全米リアルター協会(NAR・ナール)」で、NARは「中古住宅」の事を「既存住宅(existing house)」、その合計取引件数を「既存住宅販売」と呼んでいる。日本語で言うなら「中古住宅売買件数」である。
日本でもアメリカを倣った「既存住宅」という言い方は官庁系を中心にかなり広まっている。しかし肝心のアメリカ人の方はこの「既存住宅(existing house)」という表現にかなりの不自然さを感じているようで、新聞等のメディアでは「以前に所有されていた住宅(previously-owned house)」と言い換えている。
まあ不自然さとしては似たような物だ。
反対語は「新築住宅(newly-built house)」である。
「既存住宅販売」を「1件」としてカウントするタイミングは、残金決済・引き渡し時だ。この時点で「契約が完了した」とされる。
「契約書にサインした時点(日本の本契約)」での件数を集計した数字は「仮契約指数(仮販売指数)」として、発表される。
ローン否認等があるので精度は若干落ちるが、「既存住宅販売」よりも1か月半から2か月、先行した数字になるので、最近では「仮契約指数」の方も大きく重視される傾向にある。
ジャパン・トランスナショナル 坪田 清
三井不動産リアルティ㈱発行
REALTY PRESS Vol.35 2016年3月