ニューヨークのマンション市場で東京と最も大きな違いを感じるのは「超高額マンション」というセグメントの存在だ。戸当たり日本円にして30億円から120億円以上という信じられないような超高価格帯のマンション群である。香港やロンドンにも同じような価格帯の住宅はあるのだが、取引ボリュームはニューヨークが圧倒的だ。
買っているのはアメリカ人を中心とした世界中の大金持ち達だが、最近の傾向としてペーパー・カンパニーを仕立ててその名義で買う例が著しく増え、これを問題視する向きがある。真の買主が分からないことを利用し、不正行為や犯罪で得た資金で買う外国人富豪が少なからずいると見られているのだ。
アメリカ人富豪の間でもペーパー会社で買う事が流行っている。不動産を買う時に、それ専用の会社を設立して購入の形式的な主体とする事は、アメリカの商業不動産投資では昔から行われていた。このような買い方ではある程度以上の額の物件になるとメリットがデメリットを上回っている。
これら超高額マンションのセグメントは「トップエンド」とか「ウルトラ・ラグジュアリー」と呼ばれている。単純に坪単価を計算すると、大体2000万円から3500万円位で、また、必ずしも新築マンションの方が高いという訳でもない。
目立つのが、上下の階を階段や専用エレベータで連結したタイプの物件で、これらは「デュープレクス」と呼ばれる。設計段階からデュープレクスとして作られた物と、上の階と下の階を別々に買って(買い増して)、床の一部を壊して階段を後付けし、その上で住戸内をリノベしたものがある。中には三層を連結した物もあり、「トリプレクス」と呼ばれる。「トリプレクス」の所有者が直下の住戸をビッドで競り勝って買った例があり、これは「4層連結」にする事を狙ったものと見られている。
上下に連結すると言っても階段なりエレベータのスペースを開けるだけであるから、取り去る床(天井)の面積はさほど大きくない。しかし日本の既存マンションでこのような工事をしたという話は聞いたことがない。耐震計算、管理組合の承認、工事騒音、みな難題だ。
なお「デュープレクス」「トリプレクス」ともに、低層住宅では「二戸一」「三戸一」の意味になるので、ご注意を。
(ジャパン・トランスナショナル 坪田 清)
三井不動産リアルティ㈱発行
REALTY PRESS 2015年12月 掲載