トイレとアメリカン・スタンダード

 「アメリカン・スタンダード」とは直訳するなら「アメリカの標準(規格)」の意味なので、随分と大業な単語に見えるが、これは全米最大のトイレの陶器の会社だ。


 時々英字新聞に登場する会社なのだが、なんとも、志の高い名前を社名に付けたものだ。

 たぶん、昔はアメリカにいろいろな形や大きさの便器があって、工事の際にあまりに不便だったものだからこの会社が「これがアメリカの標準規格だ!」と宣言したのではないかと思うが、これは私の想像だ。


 同社は2013年に日本の同業大手LIXIL(昔の伊奈製陶ほかを統合した会社)により買収され、今は日系の会社になった。


 日本のトイレと言えばなんと言っても温水暖房便座だ(ここでは『ウォッシュレット』としておこう)。


 10年くらい前は、日本に来た外人さんのかなり多くが、いろいろいじくっているうちにトイレで顔面シャワーを浴びる羽目になった話をよく聞いた。

 一方、一部の外人さんは日本のトイレに恐怖を感じるのではないかとの話も聞いた。  トイレに入ると自動的にふたがあき、ほのかに明かりが内側を照らし、壁にはさまざまなボタンがついて小さなパネルがある――初めて見る人には確かにシュールな状況かもしれない。


 海外に行くとウォッシュレットのありがたさが身に染みる。いまだに先進国でも普及率が低いのはなぜなのだろう。


 先日、ジャパン・トランスナショナルの用事でニューヨークに行こうとした時、訳があってJTBのツアーで行こうとしたのだが、「ウォッシュレットを確約できるツアーはない」と言われてしまった。

 調べると日系ホテルのキタノだけは全室ウォッシュレット装備だった。


 ウォッシュレット以前の問題で、海外でこれはひどいと思うのは、トイレットペーパーの質の悪さだ。特にヨーロッパのものと比べると、日本製は天国である。


 ちなみにネパールのトイレットペーパーは仲間の間では「紙やすり」と呼ばれていた。

 おなかを下した時などは、ほとんど拷問だった。